「月月火水木金金」 大日本帝国と現代日本の共通点

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   香港で働いている金融機関の友人に久々に会ったら、

「日本って外から見ると、戦前と変わってないね」

という。理由を聞くと、先進国が香港経由で新興国のインフラに積極投資している最中、国民一丸となって貯蓄経由で国債を買い支え、田舎に生産性度外視の箱モノを作ったりしている様子が、まんま大日本帝国なんだそうだ。

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硬直した雇用や賃金は国家総動員体制か

   言われてみれば、サラリーマン的カルチャーというのは、どこか全体主義的である。新卒一括採用なので就職は一回勝負、35歳を過ぎれば事実上転職は難しく、どんなに窮屈でも会社にしがみつくしかない。

   辞令一枚で全国転勤し、上司にアホ呼ばわりされても歯をくいしばって耐える以外にない。こうなると労働者なのに、なぜか組織と一心同体。個人都合での転職を禁じるために国家総動員体制下で出された「労務調整令」にそっくりだ。

   そして、賃金も勝手には上げてもらえない。無能な先輩の2倍働こうが、同僚の3倍成果を出そうが、昇給幅やボーナスはだいたい勤続年数に比例して決まってしまう。社会主義というより全体主義的で、これもやはり、勝手な賃金交渉を禁じた「賃金統制令」と瓜二つだ。

   そして、高くもない給料をせっせと貯めた貯金は、金融機関を通じて国債として国に使い込まれ、茨城空港や静岡空港といった重要戦略拠点の建設に使われる。国内産業には規制を多く残してあるから、勝手に民需で食いつぶされる心配もない。これもまた一種の総動員法みたいなものである。

国債を買わない「非モテ」と「非国民」

   ちなみに、サラリーマンの労働生産性は15年連続で先進7カ国中最下位だが、逆に労働時間の長さと有給取得率の低さでは他国を寄せ付けない。

   イノベーション不足を不屈の精神力でカバーという構図は、もはや日本のお家芸である。「月月火水木金金」という例の標語をバカにする人は多いが、やってることは全然進歩していないのだ。

   そういえば最近、「個人向け国債を買わないと非モテだ」と財務省が広報していたが、

「戦時国債買わないと非国民だ」

と言うのを現代風にアレンジしただけで、本質的には同じことだろう。やはり戦況は悪化しつつあるようだ。

   さて、この第二帝国のオチがどうなるかはまだわからないが、一つだけ冒頭の彼と完全に意見が一致した点がある。それは、

「日本でサラリーマンやるのは割に合わないよね」

ということ。経済戦争に勝とうが負けようが、御免こうむりたいというのが、外から日本型雇用を見ていて抱く正直な感想である。まあ、ご参考までにね。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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