その「ネット知人」 本当にあなたの「知ってる人」ですか?

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「いや、もう凄いですよ。人がモノを買う経路が完全に変わりつつある」

   マーケティングのコンサルティングを行う友人が、興奮気味に話します。

   何がそんなに凄いのでしょう?

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そのオススメは「ステルス」かもしれない

「比較サイトとかネットメディアとかじゃなくて、ツイッターやSNSのコミュニティ上で、知ってる人が推薦したモノをストレートに買う傾向が顕著になってきてるんですよ」

   これまでなら、ECサイトや比較サイトで「人気がある」「ユーザーの評判が良い」「売れ筋はこれだ」とランキング形式などで勧められていたモノや、検索エンジンで上位表示されるモノが、やはり売れる傾向にあったのだとか。

   それが、現実、ネットを問わず、知っている人≒信頼できる人が口コミで良いと言うモノを、あまり比較などをせずにダイレクトに買うようになってきた、と。

   「とりわけ、若年層にはその傾向が強い」そうです。

   しかし、ちょっと待てよ、と思うのです。

   ブログが流行した5年ほど前、メーカーや販売サイドから報酬を得ていながら、それとは知らせずに、「自分が気に入っているから」「自分が使って良いものだから」と、商品をブログ上で勧める「カリスマ読者モデル」や有名人がいました。

   背後にいる「スポンサー」が透けて見えないことから、「ステルス・マーケティング」と呼ばれ、筆者もメディアを通じて幾度となく警鐘を鳴らしたものです。

「あの有名人は私の知人」と勝手に錯覚

   現実に知っている人なら、気心も知れ、自分のなかでの信頼度もある程度は確立しているでしょう。

   でも、「ネット上の知り合い」には、ネット上だけで知っている人や単につぶやきをフォローしているだけの有名人など、実は一方通行で知っているだけの人もいるのではないですか?

   有名人や知る人ぞ知るカリスマなどを利用して商品を販売する「広告塔モデル」は、現実社会で永~い間、フツーに行われており、またしばしばトラブルの元ともなる手法です。

   ネット上でも現実社会でも、誰かが何かを言っていたら、それが何かしらの裏付けのある(ありそうな)信ずるに足ることか、それとも単に「言ってるだけ」なのか、常に意識しておく。

   これは、ネットを上手に使いこなすためのリテラシー、いわゆる自己責任の第一歩であります。

   決して世知辛く、なんでもかんでも疑えということでもないのですが、安物買いの銭失い、あるいは詐欺などのトラブルに遭わないためにも、ある程度の猜疑心を失ってはダメよ、ということなんですね。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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