ネット上で、ユニークな名前の会社が話題だ。モータースポーツ情報を提供する複数のサイトを運営する、株式会社ギュギュギュギュギュイーン。「トータルプランニングアンドサービス株式会社」から今の社名に変更したのは、2009年のことだ。
「恥ずかしいのは最初だけ。1か月で慣れます」
代表取締役の大野省三氏は、元カーレーサー。元の社名では「何でもやる企画会社のイメージしか与えられない」と反省し、事業の中身を分かりやすく示すネーミングはないかと知恵を絞った。
思わず吹き出しそうな社名だが、レーシングカーのタイヤのきしみを連想させ、事業内容を分かりやすく反映していることは確か。5つの「ギュ」は、「プロレーサー」や「モータースポーツファン」など5つの関係者に貢献するという企業理念も踏まえている。
社外からの電話には、「お電話ありがとうございます。株式会社ギュギュギュギュギュイーンでございます」とフルネームで対応するように社内で決めているそうだ。少し照れくさいようにも思えるが、
「恥ずかしいのは最初だけで、1か月で慣れますよ!」
とのこと。ただ、電話を受けた側では「ギュイーンさんからお電話です」と略されているかもしれない。
このほかネット上には、オバマ政権を先取りしたシステムサポート会社「株式会社イエスウィキャン」や、インターネット広告の「株式会社ガッチリ」、電話帳のトップ掲載を狙った「アーアーアー企画」「アーアーアーアーアーアーアー探偵社興信所」など、変わった社名が挙がっている。
城山三郎の小説からヒント
インパクトでは負けるが、リサイクルショップ「エンターキング」を運営する株式会社サンセットコーポレイションの社名も興味深い。縁起のいい「サンライズ」(日の出)なら容易に理解できるが、わざわざ「サンセット」(日没)とつける意味は何なのか。
広報の小林順子さんによると、この社名はファミリーレストランの「ロイヤルホスト」と「すかいら~く」の創業を描いた城山三郎氏の小説『外食王の飢え』からヒントを得たものだという。
小説の主人公は、外食産業の黎明期に野心を持って突っ走るワンマン社長と、彼が率いる「レオーネ」(ロイヤルホスト)。そこに、ライバル会社の「サンセット」(すかいら~く)が絡みながら、首都圏で激しく競争する様子が描かれている。
社長の丹野照夫氏が共感を抱いたのは、ライバルの「サンセット」の方。兄弟で力を合わせて、知恵を出し合い、こつこつと地道に成長する姿に、「自分が創業したときには、こういう地に足がついた経営をしたい」と思ったのだそうだ。
「社長は常々、『社員はお互いに補って仕事をしていこう。できないことは他人に任せ、できることを精一杯やっていこう』と言っているのですが、その発想の原点はこの小説にあるようです」
社名の由来は、社内報などを通じて、本社スタッフや各店舗の店長クラスに周知されているという。最近の会社の自由なネーミングにも好感が持てるが、一見地味だが思いのこもった社名というのも味わいがあっていい。