『裸の王様』という童話がある。自分では「イケてる」と思っているが、実はパンツ一丁だったという空気の読めない可哀そうなおじさんの話である。ところで、一連の選挙の流れを見ていて気付いたのだが、実は日本には王様同様、空気の読めてない裸の政治家が少なくない。
菅首相はランニング一丁、鳩山さんは素っ裸
最初に服を脱いだのは、麻生さんだ。この人はよっぽど頭の作りが単純な人らしくて、野党が宣伝目的で使った「構造改革で格差拡大」というプロパガンダを(与党の党首でありながら!)どうやら本気で信じてしまったらしく、「俺は郵政民営化にも賛成じゃなかった」とまで言い出し、心ある支持者を唖然とさせてくれた。
しかも、じゃあ何をするのかと思えばバラマキである。個人的には、パンツ一丁くらいのインパクトはあったように思う。いまだに秋葉原あたりでニコニコ手を振っている姿をみると、たぶんいまだに自分がパンツ一枚だということに気づいていないと思われる。
というわけで自民党は全然ダメなので、前回の総選挙では僕は民主党に投票したわけだが、次に登場した鳩山さんはもっと凄い人だった。
「行き過ぎた市場原理主義」
という、そんなの日本にあったっけ?と誰もが首をかしげるフレーズが大好きで、「いのち!」と絶叫する姿は、明らかに麻生さんを超えていた。パンツどころか素っ裸といっていい。
さすがに一年持たずに降板したが、代わった菅総理も負けてはいない。だから行き過ぎた市場主義なんて無かっただろう、という突っ込みをモノともせず「第三の道」というボケを連発し、参院選で敗北。期間は短いけれども、ランニング一丁くらいの破壊力はあった気がする。
勝利した自民党もいまだ「下着姿」だ
もちろん、総理以外の政治家も、みんな裸が大好きだ。
「共産党への追い風が吹いている」と勝手に勘違いして選挙区に出てきて落っこちた共産党の小池さんや、与党としてやりたい放題JP(日本郵政グループ)労組にサービスしつつ候補者全滅という快挙を成し遂げた国民新党は、やっぱりパンツ一丁だろう。
もちろん、なんで勝てたのか、というかそもそも自分たちがなぜ野党に落ちたのかいまだによく分かっていない節のある自民党も、下着姿には違いない。
そう考えると、とりあえず「構造改革の推進」という服を着ていたみんなの党が大躍進したのは当たり前の話である。
まあ共産党や国民新党は、支持者も素っ裸みたいなものなので今のままでもいいけれど、とりあえず民主党や自民党のセンセイ方は、走り回って握手して回るだけではなく、一度じっくり有権者の話を聞いてみてはどうか。「あんたは裸だ!」と言ってくれる人は少なくないはずだ。
城 繁幸