ビジネスは、時間との勝負。特に責任の重い人は、限られた時間の中で優先順位をつけながら仕事をこなしています。そういう人にお願いごとをするときには、相手が忙しいことを認識していると伝えてからお願いすると、交渉がスムーズに進みます。
尊敬語よりも「クッション語」をうまく使おう
新入社員が職場で最初に不安になるのは、人間関係とともに言葉の使い方。特に敬語の使い方が分からないと気にする人が多いようです。
また、先輩たちに「後輩のイラッとするところ」を聞くと、「言葉遣いがなっていない」という回答が上位となります。
敬語というと、高度な尊敬語や謙譲語の使い分けをイメージしますが、実際には決まり文句のような「クッション語」をうまく挟み込むことの方が、ビジネスにおける言葉遣いの印象をアップさせるには効果的なのです。
例えば、忙しい人に頼みごとをするとき、どのようなお願いの仕方をするでしょうか。ビジネスに慣れない若手社員だと、担当直入に用件だけを話してしまいがちです。
A社営業担当「それでは今回のご結論は、来週の月曜日までにお願いします」
B社社長「(なんだよ急に。こっちは忙しいんだよ・・・)ああ、なるべく結論を出すよ」
A社営業担当「よろしくお願いします」
こういうお願いの仕方では、翌週「社長、お約束の件ですが」と連絡を入れたとしても、「悪いけど忙しくて決めていないんだ」「なるべくとしか言ってないだろ?」という返事しかもらえません。何が悪かったのでしょうか?
相手を思いやる一言で「バリア」を破る
A社の営業担当さんは、相手が多忙であることを気遣う一言を入れなかったがために、B社社長の「自分は忙しくて時間がないのだ」という心理的な障壁を破ることができなかったのだと思われます。
責任が重い仕事をしている人は、常に優先順位を考えて行動しています。したがって、より重要なもの、より成果に結びつきやすいもの、より儲かるもの、より心の動くものから手を着けようとしたがるわけです。
そういう人に対しては「あなたが忙しいことは十分承知している」ということをきちんと伝え、言いたいことを言ったうえで「あなたの中での優先順位を上げてくれませんか?」というシグナルを一緒に送ることが大切です。
A社営業担当「社長、ご多忙のところ恐縮ですが、今回の件は来週の月曜日をメドに結論をお願いできますでしょうか?」
B社社長「ああ、わかったよ。今週いっぱいは予定が立て込んでいて忙しいんだけど・・・。土日で検討して、なんとか月曜日の午前中には結論を出すことにするよ」
A社営業担当「ありがとうございます。お忙しいところ恐れ入ります。それでは来週月曜の午前中にご連絡を差し上げます。よろしくお願いします」
なお、「来週の月曜日までに」を「月曜日をメドに」へと変えたことで、相手へのお願いが和らぎ、好感度をアップさせています。
相手を思いやるサインを出す一言があるかないかで、バリアを破れるかどうかが決まるのです。いちど覚えれば、いろいろな形で使えますが、知らないと使えません。ひとつの単語のように覚えて、お願いごとをするときに使ってみてください。
西出博子