「営業の仕事って何?」と質問されたら、どう答えますか? ありきたりに「売ること」ではダメっぽいですが、カッコつけて「創造的な仕事」などと答えてもリアルではありません。普段から考えていないと、的確な回答は思いつかないものです。
与えられた手段を実行するだけではない
営業とは、会社が求める「売上目標」あるいは「予算」を達成する仕事。それは、どの会社でも同じことです。したがって「稼いで会社に貢献する仕事」と回答する人こそ、営業の本当の意味が分かっていると言えます。
営業が稼がなければ、商品開発にも投資できませんし、社員教育にもお金がかけられません。管理部門も維持できません。会社の基盤となる「稼ぐ」役割を担う仕事には、誇りをもっていいのです。しかし中には、
「営業なんて、単純でキツイだけの仕事」
「会社から与えられたノルマの達成なんてむなしい」
と思う人もいるでしょう。かく言う私も新人のころは、営業に嫌悪感さえ持っていました。ひたすら頭を下げて押し売りするイメージ。格下の仕事とさえ思っていました。今となっては恥ずかしい話ですが・・・。
営業は、予算達成に必要な「手段」を考えて実行する仕事であり、与えられた手段を実行するだけの仕事ではありません。だからこそ大変はありますが、豊かな発想が求められるやりがいのある仕事なのです。
営業で重要なのは、KPI(Key Performance Indicator=成功要因)を発見し、そこにたどり着くまでに必要な行動を逆算して組み立てることです。それは、どんな営業でも同じですし、他のいろいろな仕事にも共通するものです。
銀座のクラブにおける成功要因
例えば、ある量販店の紳士服販売員の場合、商品の説明だけでは1割しか購入に結びつかないけれども、「試着」まで持っていければ購入の確率が3割まで高まるということが分かっていたとします。
売上目標が「1日5着」だとすると、20人に試着させると6人が購入する計算となり、目標が達成できます。つまり、ただ結果を追うのではなく「20人に試着させる」ことを数値目標にして、手段を考えていけばよいのです。
「ここまでくれば、勝ったも同然」という成功パターンを作っておけば、最後の結果がうまくいかなくても、確率の問題だと思えば落ち込まずに済みます。
KPIは業種によって異なります。医療機器の営業であれば「開業医に機器を置いてもらうこと」、人材紹介業であれば「24時間以内に3つの候補を示すこと」であり、銀座のクラブであれば「お客さんにボトルを入れてもらうこと」です。
これを実現するプロセスを逆算すると、お客さんの方から「今日はボトルを入れようか」と言ってもらう偶然を待つのではなく、いかにして
「ねえ、ボトル入れていい?」
と言える状況を作ってOKをもらうか、ということになります。
そこまで持っていくために、どういう会話をするのか、ヘルプの女の子の役割は何か、と考え、それをルール化して毎回やり切る。これを繰り返すことで結果が出てきます。このような営業の意味を理解し実行できる人は、どんな会社でも重用されることでしょう。
高城幸司
*2010年3月、『トップ営業のフレームワーク―売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』が東洋経済新報社より発行されました。