“人生の休暇”を1年もらって世界を旅するアシシです。「世界一蹴の旅」も、最終目的地である南アフリカでのW杯を迎え、最高に盛り上がっている。そのうえ、先週は日本代表がグループリーグを突破し決勝トーナメント行きを決めて、興奮冷めやらぬところだ。
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GDPは出場国最下位だが国内リーグは強い
ここ現地での観戦も、10試合を超えた。日本代表が強豪デンマークを破った翌日、チリ対スペインの試合を観戦してきたのだが、観客から何度も、
「Congratulations!」(おめでとう!)
と声を掛けられた。快勝劇を演じた日本代表の注目度は、現地でも確実に高まってきている。
ドイツW杯では、サッカー強豪国のサポーターが勝利の美酒にひたりながらバカ騒ぎしているのを、ただただ羨望の眼差しで見ていた。しかし今は、日本代表のユニフォームを着て街を闊歩するのが、楽しくてたまらない。
日本人であることをこんなに誇らしく思えることは、今までの人生の中であっただろうか? 4年に1度の世紀の祭典、ワールドカップ。勝ち組のサポーターとして開催地にとどまれる幸せをかみしめながら、残りの2週間を思う存分楽しみたいと思う。
決勝トーナメントでぶつかるパラグアイに、我々は今年1月の終わりから2月の初めまで1週間ほど滞在している。南米大陸の真ん中にある人口700万人の小さな国。サッカー強豪国のブラジルとアルゼンチン、それにボリビアに囲まれている。
旧スペイン植民地で、19世紀には周辺国との戦争に敗れて国土の4分の1を奪われた歴史を持つ。GDPは出場32カ国の中で最下位。人口の4割が貧困層という、経済的には厳しい状況にある国である。
しかし、国内のプロリーグであるリーガ・パラグアージャは、2009年の世界サッカーリーグランキングで第16位の強豪だ。元Jリーガーも何人かプレーしている。日本のJリーグの27位と比べても、その強さは分かるだろう。
草サッカーに興じる子どもたちは裸足だった
パラグアイで最初に訪れたのは、ブラジルとの国境の街からバスに揺られて50キロ、サントドミンゴ村という人口600人ほどの小さな村だった。
入国前にプレゼント用のサッカーボールを購入し、子どもたちが奪い合いをしないよう村長に管理をお願いした。すると村長は、
「せっかくだから、このボールでサッカーをしていかないかい?」
と子どもたちを集めてくれた。グラウンドは村長宅の裏庭。子どもたちは裸足で、靴を履いている子などいない。縄につながれていない牛が紛れ込んでくる、のどかな風景だ。
翌日は首都アスンシオンに行き、南米サッカー連盟を訪れた。出迎えてくれたレオス会長は親日家で、机の上には鎧兜の置物を飾り、自伝には日本語版もある。若いころパラグアイ代表のユースチームを率いて日本を訪れたとき、手厚い歓待を受けてすっかり日本びいきになってしまったという。
パラグアイの原住民であるグアラニー人は、日本人と同じモンゴロイド系。日系パラグアイ人と日本人で9000人もいるというし、日本から大勢の青年海外協力隊員がパラグアイ各地へ派遣されている。
地球の裏側にあるにもかかわらず、実は日本とかかわりの深い国なのだ。出場32カ国の中でも、我々にとって思い入れが特に深い国。決勝トーナメントで対戦する相手として不足はない。
一緒に球蹴りをした農村の子供たちや、現地で活躍する日本人協力隊員も、テレビモニターを通して声援を送ることだろう。そんな現地で交流した人々に思いを馳せながら、我々もスタジアムで精一杯応援しようと思う。
アシシ@ヨハネスブルグ