ある会社の経営者が、ツイッター上で求職書類への「ハンコの押し方」についてツイートしたところ、多くの返信がついた上に、反響がネット掲示板やブログなどにも広がっている。きっかけとなったツイートは、次のようなものだ。
「中途採用の書類選考中なう。印鑑を斜めに押してる人、写真を貼ってない人、貼ってあっても、まっすぐに切れてない人。。。この人たちは、本当に採用して欲しいと思ってるんだろうか??」
「特技」の欄にギャンブルを羅列
これに対して、ネット上には「書類ってそんなに重要?」「ハンコの傾きで(人物を)判断するなんてアホらしい」といった否定的なコメントが相次いだ。
しかし、ある中堅会社の人事担当の女性は、騒動のきっかけとなったツイートについて「すごくよく分かりますよ」と同情を寄せる。
「うちの会社は常識的な書類がほとんどですが、中にはとんでもない人がいるんですよ。『仕事なんかしたくない』と思いながら作ったんだろうな、というようなものが、時々混じってくるんです」
おかしな書類は、3年ほど前から見られるようになったという。
切手なしで送信、宛先の住所や社名が間違っている、紙はグシャグシャ、空欄だらけ、特技にギャンブルを羅列、写真がプリクラなど「ふざけているんじゃないか」とさえ思うものも。
「ひとつだけ欠けているなら、忘れたのかな、ミスかなと思いますが。そうじゃなくて全体として、いかにもいい加減なものがある。そういう書類って、ハンコも曲がってるんですよ。社長は、そういう書類に当たったんじゃないですかね」
特に、現在は部門ごとの配属人数が減らされているので、以前のような仕事上の多重チェックができない。そのため、独力で最低限のことがきちんとできる人でなければ、「書類で分からない才能があったにしても、とても安心して仕事は任せられない」ということだ。
斜めに押すのは「お辞儀」の意味か
また、「印鑑を斜めに押してる人」という点について、「ハンコはまっすぐ押さなきゃイカンでしょう」という人だけでなく、
「わざわざ斜めに押しているんじゃないの?」
と指摘する人もいた。
どうやら、目上の人に提出する書類には、「お辞儀をするように」左に傾けて押すべきというマナーが一部にあるようなのだ。学校で習ったという人もいれば、大企業に入ってから先輩に教わったという人もいる。
中には入社早々、右に傾けてハンコを押したために、先輩に叱られて書類の作り直しを命じられた人も。角度は「10度くらいがよい」が「45度以上だとまずい」など、さまざまな意見があるようだ。
そもそも、求職書類にハンコや顔写真が本当に必要なのかという点についても議論がある。書類がすべてデジタル化されてしまえば合理的なはず、という意見もある。
一方、ここ数年でデジタル化が進みエントリーが容易になることで、会社が受け付ける書類数が急激に増加するとともに、内容が薄くなってきているという指摘もある。前述の女性担当者も、
「何十というエントリーのひとつと安直に考えていると、受け付けた会社としては迫力を感じない。まずは内容。その上で全体の書き方が問題になります」
という。くれぐれも「自分はハンコの傾きだけで判断されている」などと考える必要はないということだ。