ネット上で「社畜」という言葉が話題になっている。「会社」と「家畜」の合成語で、会社に飼い慣らされてしまったサラリーマンを指す蔑称だ。もとは作家の佐高信氏が、社宅を「家畜小屋」と呼んだことで広まったらしい。
「仕事以外に生き甲斐を求めるのは次善の策」
J-CAST会社ウォッチに寄せられたあるコメントでは、社畜を、
「『会社最優先』以外の価値観を持つ人間を問答無用で否定する人」
と言い換えている。仕事以外の価値観を否定する人に対する、強い拒絶の姿勢が感じられる。
ただし、会社に雇われて給料をもらい、ある程度の生活を手に入れるためには、ときには「会社優先」を求められる場面もあるだろう。
上司の命令には従わなければならないし、会社の目標達成のために、与えられた権限の中で自発的に臨機応変の対応を求められることもある。それらをまったく受け入れられないのならば、会社を辞めてフリーランスでやっていくしかない。
「社畜」と「フリー」について、ドワンゴの川上量生会長が2010年5月20日に、ツイッターにメッセージを残している。川上氏は、仕事をすることには、
(1)フリーでやりたい仕事をする
(2)フリーでやりたくない仕事をする
(3)社畜でやりたい仕事をする
(4)社畜でやりたくない仕事をする
という4つの選択肢があるとする。そして、(1)を実現するのは「ほとんど無理」であり、フリーになっても現実は(2)であることが多いので、「やっぱ人生で目指すべきは(3)だよね」という。
そのうえで、会社でやりたくない仕事をしつつ、「仕事以外に生き甲斐を求める」のは「次善の策」としている。
会社員として仕事に生きがいを見出せることは、それなりに幸せなことであり、人生の目標にもなりうるというのが川上氏の考えだ。
ここでの「社畜」とは「会社最優先」を意味しているわけではないと思われるが、「仕事に生き甲斐を求める」ことを揶揄する声もある中で、若手経営者からひとつの考えが示されているといえるだろう。
「仕事に生き甲斐を求めない人」と働く道も
川上氏のツイートを受けて、メディアジャーナリストの津田大介氏は10年6月8日、ツイッター上で
「『やりたくない仕事を他人に強要される』のが一番のストレスなので2《フリーでやりたくない仕事をする》は主体的に選択してる分、精神的に楽。フリー最大の特権かも。」
とフリーランスの立場からコメントしつつ、
「でも、結論としては実は kawango さんと一緒で、仕事にやりがいを求めたい向きは、(3)《社畜でやりたい仕事をする》を実現できる『明るくて楽しいブラック企業』に行くってのが目指すべきゴールだとは思う。」
という表現で川口氏に賛意を示している。この意見に対し、ネット上には、
「長期的に見て(3)のワークスタイルは先細りだと思うけどね」
と否定的なコメントがあった。だとすれば、今後は「ホワイト会社」が増えていくのか、それとも「暗くて苦しいブラック会社で仕事をする(そして仕事以外に生き甲斐を求める)」人が増えざるを得ないということか。
別のコメントでは「明るくて楽しいブラック企業」にとどまるべきではなく、会社で蓄積したスキルを元に独立し、「フリーでやりたい仕事」ができる状態を目指すべきと主張する人もいた。
人によってさまざまな価値観があるが、お互いを否定し合っていても生産性は低いし、どちらかに統一できるものでもない。
同じ目標や価値観を共有して働く方が能率的な面もあるが、異なる価値観を受け入れ「仕事に生き甲斐を求めない」同僚を許容しながら、ともに働くという道を模索する必要があるのかもしれない。