労働政策研究・研修機構は2010年6月14日、「今後の産業動向と雇用のあり方に関する調査」の結果を発表した。回答者は、全国の企業3025社。調査結果からは、企業が人材確保にあたって「いまの職場になじめる人」から「会社に新風を取り込んでくれる人」へシフトしている傾向がうかがえる。
「新しい発想」「自社にない経験」が歓迎される
人材の「確保」にあたって「これまで重視してきた方針」と「今後重視する方針」について、企業に尋ねた結果を比べると、
「自社にない新しい発想を持った人材の確保」
「自社にない経験を有する人材の確保」
の2項目で「今後重視する」が大きく上回った。特に「新しい発想を持った人材重視」の会社は、15.5%から38.5%へと急増している。
一方、「これまで重視」が上回ったのは、
「自社の社風になじむことができる人材の確保」
「職場でチームワークを尊重することのできる人材の確保」
の2項目。企業は今後、「職場の和」よりも「自社にない経験を積み、新しい発想をもたらしてくれる人」の採用を考えているということだ。
いわゆる「和を乱さないこと」「空気が読めること」の優先順位は、将来的に低下していくのかもしれない。しかし、新風を吹き込もうとする人が入社してくれば、既存の社員との摩擦が生じることもあるのではないか。
人材育成は「マネジメント能力」重視へ
人材の「育成」にあたっては、これまで重視してきた方針では「経験をもとに着実に仕事を推進する能力」がトップだったが、今後重視する方針では「組織や人を管理する能力」がトップとなった。
過去の延長線上ではない「新しい経営環境」に仕事のしくみや人材を適合させていくマネジメント能力を持った人を、会社が望んでいるということだ。
「課長になんかなりたくない」
という声も聞くが、やはり会社は優秀なマネジャーがノドから手が出るほど欲しいらしい。高収入を得るための道でもあるだろう。
「従業員評価」の視点については、今後重視する点は「個人の仕事の成果・業績」と「仕事に対する努力など取組みの姿勢」がトップに。結果とともに取組みの姿勢を重視していくということは、これまでと変わりがない。
ただし「これまで」との比較では、「中長期的に見た企業に対する貢献の蓄積」に対する評価が18.6%から37.3%へと増加している。短期的な成果主義が進むと思われていた節もあるが、実際には企業の生き残りをかけて、逆の動きが進んでいるのかもしれない。