稼げる人は「仕事の切り上げ」の見極めがうまい

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   「お先に失礼します」――自分よりも早く職場を出る人を見たら、あなたはどう感じますか? 昔は、他人より早く仕事を上げて帰ることに「罪悪感」を感じたものです。特に若手社員のうちは、先輩が仕事をしているのに先に帰るなどもってのほかと言われて、無理やり仕事をしていました。

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成長期には「長時間労働」の必然性があった

   かつて残業が美徳とされたのには、理由があります。高度経済成長期には仕事が無尽蔵にあり、働けば働くほど業績が上がったので、労働時間が長いことが会社に貢献すること、自分が出世して給料が上がることとイコールだったからです。

   また、若手社員が仕事を覚えるためには多くの経験が必要で、何も知らない素人が一人前のプロになりたければ、先輩たちよりもこなす仕事を増やすべきだという考えもありました。

   これらの考え方は、高い専門性とハードワークと引き換えに高給で処遇しているコンサルティング会社や、成長分野で激しい競争をしているベンチャー企業などにおいては、いまだに有効な部分も残っています。

   そういう会社であることを承知で、高い報酬や貴重な経験を積むためにその環境に飛び込んだ人に対して、他人がとやかく言う必要もないでしょう。日本には会社が嫌なら辞める自由があるのです。

   一方で、業績が伸び悩んでいるのに、相互牽制によって職場を出にくい雰囲気を醸成し、労働時間をダラダラ延ばしている人たちがいまだにいます。しかし時代は変わったので、会社にいる時間が長いほど貢献しているとはいえず、コストを考えれば、むしろ逆の評価を受けるようになっています。

売上と残業時間が反比例した職場

   ある会社で営業部門の残業時間と業績の相関関係を調べたところ、売上成績が高いグループは残業時間も短かったという結果が出たこともありました。もちろん成績が上がらないからこそ、頑張って残業しているという面もあるのでしょうが、仕事のメリハリがつかない人の成績が上がらないのは、当然という気がします。

   特にいまは、上司が、

「いかにコストを下げながら成果を確保するか」

で査定されるので、とにもかくにも部下の残業を許さず、学校の先生のように「やるべきことが終わったらサッサと帰りなさい」と帰社を奨めるようになりました。

   最初のうちこそ、一律「ノー残業デー」などと言って強制的に退社させていましたが、そのうち同僚が残業しているかどうかにかかわらず、早く仕事を切り上げることがよしとされる職場が増えてきたのです。

   もちろん忙しい同僚に手を差し伸べることを否定するものではありませんが、仕事を早く切り上げない人の評価が、以前とくらべて180度変わる時代になりつつあるのは間違いありません。

仕事に終わりはない。ならば途中でも切り上げよう

   それでは、早く仕事を切り上げるためには、どうすればよいのでしょうか。遊び好きの私が以前から実践しているのは、途中であっても、とりあえず仕事を止めることです。

「企画書をもう少し直したいから、あと30分だけ残業しよう」

と手を着けると、30分のはずが1時間、2時間と延びてしまうことはありませんか? 定型業務などを除けば、仕事を切り上げるのにちょうどいいタイミングというのは、実はあまりないのです。

   アウトプットのクオリティを高めることが「仕事の成果」に結びついているでしょうか。プレゼンソフトで作りこんだ立派な資料が、実質的にA4の紙1枚のメモと同じ効果しかなかったというケースは往々にしてあります。

   あらかじめ退社時間を決めて、仕事が途中でも切り上げてしまいましょう。その代わり、仕事を継続するときには、翌日に戸惑わないようしっかり「To Do」をメモしておきます。

   帰りがけにその「To Do」を思い返しながら、どうやれば効率的に上げられるかを考え、リフレッシュして翌日に再開した方が仕事が速く進みます。もっとも効率の悪いのは、効率の悪い状態で遅くまで仕事をし、寝ぼけた頭で翌日出勤する悪循環です。

高城幸司

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*2010年3月、『トップ営業のフレームワーク―売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』が東洋経済新報社より発行されました。
高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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