日本の産業政策は一度も効いた試しがない

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   元内閣参事官の高橋洋一氏が、最新刊で「民主党には成長戦略がないけど大丈夫?」という疑問に答えている。参議院選挙を控えて、特定産業への肩入れを期待する人も多いが、高橋氏は明確に「産業政策は不毛」と突っぱねる。

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予算配分は公正中立に。市場メカニズムに任せる

高橋洋一著『日本の大問題が面白いほど解ける本』
高橋洋一著『日本の大問題が面白いほど解ける本』
――財源論とともに自民党サイドから最近聞こえてくるのが、民主党には成長戦略がない、という批判です。成長戦略とは何かと思っていたら、どうやら自民党と霞が関が過去50年にわたって続けてきた産業政策のことのようです。
   しかし、いまや先進国ではこの産業政策というのはほとんど行われていません。当然です。政府が特定の産業に肩入れをすることは明らかな不公平だからです。それよりも予算配分はあくまで公正中立にし、産業界のことは市場のメカニズムに任せる、というのが先進国の常識です。
   ・・・もちろん、なかには成功を収めた例もありますが、それが本当に官主導の政策によってもたらされたものかは疑問です。また、多額の税金が投下されたわりには、打率が低いといわざるをえません。
   1980年代に日米貿易摩擦が深刻化するなか、チャーマーズ・ジョンソンなどのアメリカ人研究家が「護送船団方式」などのキーワードで、日本の経済政策が非民主的で非先進国型であると批判しつつ、必要以上に日本の産業政策を持ち上げたのです。また、城山三郎氏の小説『官僚たちの夏』もこれに貢献したかもしれません。それから30年が経過し、まだこの不毛な政策を続けたい人びとが日本にはいるのです。
   成長戦略の名のもとに、特定産業分野への肩入れを予算化し、そこに特殊法人をつくって霞が関は天下り先を確保する、政治家は票田を押さえる、という構図が日本では長く続いてきました。しかし、いまや国民の多くはこの仕組みに気付いていますし、何よりもそれは限界を迎えているのです――

(高橋洋一著『日本の大問題が面白いほど解ける本』光文社新書、40~41頁)


(会社ウォッチ編集部のひとこと)

高橋氏は本書で、景気対策や社会保障、税制、地方分権に関する21の質問に答えている。一貫しているのは、投下するお金に見合った便益が得られるかという「コスト・ベネフィット分析」の視点だ。公共事業に市場原理を持ち込むことに抵抗感を持つ人もいるかもしれないが、「事業仕分け」では成果も上がっている。社会問題に対するひとつの見方として参考になるだろう。

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