米国の仕事情報サイト「careercast」が、2010年の職業ランキングを発表している。200の職業を、身体的負担や精神的ストレス、労働環境、収入、雇用見通しを基に評価し、順位付けをしたものだ。
保険商品の設計などに携わる「数理のプロ」
1位となったのは、アクチュアリー(Actuary)という仕事。聞きなれない職業だが、日本アクチュアリー会のホームページでは、「確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナル」と説明されている。
将来起こりうる事故や病気、災害などに備えるために、それが起こりうるリスクを計算する。大学で数学や統計学を専攻し、保険会社や信託銀行に勤務して、保険商品や年金制度の設計に携わる人が多いようだ。
日本でアクチュアリーの資格を取得するには、「数学」「生保数理」「会計・経済・投資理論」などの資格試験に合格する必要があり、最低でも2年間かかるという。
ネット上では、アクチュアリーの年収について「20代で1000万円」「外資なら3000万円」といった情報が飛び交う。試験は最難関と言われ、有資格者は国内に1000人程度しかいない。おそらく、多くの人が苦手とする複雑な計算ができる知的スキルを持っているために、他の人よりもよい条件で職業生活を送れるということだろう。
知的スキルという点では、医師を連想するが、ランキングのトップテンにも入っていない。これについては「高給なだけで、疲労や精神的ストレスとか当直とか考えたら底辺ともいえる」という意見もある。
米国で「歴史家」が高く買われるワケは
2位と3位には「ソフトウェア・エンジニア」「コンピュータ・システム・アナリスト」といったIT系の仕事が挙がった。ネット上には、
「本当に頭使える人たちを優遇する国なのね」
「日本のプログラマはいかに辞めるかに頭を悩ましているというのに」
と嘆く声も。あるブログには、30歳で転職して12万ドル以上の収入を得ているエンジニアが紹介されているが、日本と米国では何がそんなに違うのだろうか。
4位と5位には「生物学者」と「歴史家」が入った。careercastの記事によると、歴史家は教育分野だけでなく、国防産業や政府関係でも需要があり、2016年までに24%の成長が期待されているという。いかにも米国という感じだ。
結局、数学や生物、歴史など高い専門性を有する知的労働者が上位に。「なぜ勉強しなければいけないの?」と大人に尋ねる子どもは多いが、「大きな会社に入るため」ではなく「他の人にできないことをして優雅に働くため」と正しい助言を聞いていれば、と悔やんでいる人もいるかもしれない。
一方で、ワーストのランキングでは、1位が港湾労働者、2位が林業、3位が鉄骨組立工だった。心身への負担が大きく労働環境が悪いことが理由のようだが、デスクワークよりもアウトドアで仕事をする林業の方がずっと気分よいという人もいるだろう。人によって必ずしも最悪ではないのは言うまでもない。