「何事も第一印象が大事」と言われます。特にビジネスにおいて、相手が社外の取引先、しかも会社の経営者だと、第一印象は、ほとんど全てといっても過言ではありません。
忙しい経営者は、時間管理に普段からとてもシビア。第一印象でさっさと相手を判断してしまいます。軽い会話が始まったばかりなのに、導入の3分間で見極めて、
「こいつの話を聞いていても無駄だな。切り上げて次の仕事をしよう」
と思えば、後の話は部下に任せて席を立ってしまう社長もいます。これでは最高の意思決定権者を前に、大きなチャンスを逃すことになってしまいます。
15分を3時間に延長してもらえた理由
逆に、「こいつは何だかできそうなヤツみたいだから、ちょっと仕事を頼んでみようか」と思えば、次のアポイントを飛ばしてでも、徹底して話を詰めることもあります。それが、経営者というものなのです。
ある社長と、面談の機会をもらったときのこと。社長室で約束の時間を過ぎて、待つこと30分。登場した社長は、いきなり腕時計をのぞき込み、
「今日はあまり時間がないんだよね」
とつぶやきました。次の予定も詰まっているせいか、社長の顔にはやる気がまったく見られず、せっかくのチャンスがいきなりピンチです。予定された時間は15分。私は腹をくくって、
「これは、社長にご判断いただきたいお話です」
と、自信を持った態度で切り出しました。いつもは担当者に話す細かい前置きはやめ、30歳も年上の社長と対等の経営者になったつもりで、この仕事がなぜ必要なのか、長期的な視点に立った話題に絞って話しました。
本音では、「君、ずいぶん生意気じゃないか!」とお叱りを受けるのではないかと、内心ビクビクしていました。ところが、こうした態度がいい意味で社長の「琴線」に触れたのです。やる気の見えなかった社長の表情が、ものの数分で変わっていきました。そして、
「その話、もう少し聞かせてもらえませんか」
ということになり、15分の面会の予定が、気がつけば3時間にも延長。幸いにも、この瞬時の見極めで「できる」印象を相手に刷り込み、大きなビジネスにつなげることができたのです。
まずは「結論」から手短に話す訓練から
あらためて振り返って考えると、これまでお会いした「稼げる人」は、相手が誰であれ、自信を持った堂々とした態度を取っていました。ただ、「不遜」や「失礼」な態度と、「堂々」とは大きく違います。
言葉遣いや、目上の人を立てる振る舞いなどがしっかりした上での態度でなければなりません。ここを勘違いすると、大変なことになります。
「あいつは礼儀をわきまえていないからダメだ」
となれば、会社ごと出入禁止になってしまうでしょう。ただ、腰が低いだけでも認められず、まわりくどい人は好かれません。経営者は多忙な上に、結果を厳しく追い求めるため、結果に関係のない話はしたがらないのです。
時間をかけてジワジワと説明をこらしていくタイプもいることは確かですが、経営者でなくとも、1つひとつの仕事に割ける時間が限られるのが現実。冒頭の数分間で(できそうなヤツみたいだ)と思わせることができなければ、次回のチャンスが回ってきません。
これからも「忙しいから、結論ちょうだい」と、せっかちな人が増えていくことでしょう。堂々とした態度が難しければ、とりあえず忙しい相手の立場に身をおいて、結論から手短に話す習慣だけは身につけておきたいものです。
高城幸司
*2010年3月、新刊「トップ営業のフレームワーク―売るための行動パターンと仕組み化・習慣化」が東洋経済新報社より発行されました。