“人生の休暇”を1年もらって世界を旅するアシシです。サッカー南アフリカW杯開幕まで、あと37日。岡田監督が登録メンバーを発表する「運命の日」も、5日後に迫ってきた。開幕までのカウントダウンが佳境を迎える中、W杯出場32ヶ国を巡る「世界一蹴の旅」も、残すは最終国アルジェリアのみとなった。
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火山噴火で危うく断念するところだった
2008年の1年間でテロが約350件発生し、約250人が死亡しているテロ多発国家、アルジェリア。入国の審査は厳しく、通常なら隣国の大使館で手に入る入国ビザも、国籍のある国(我々にとっては日本)で出たものしか認められないという。今まで訪問した累計50ヶ国中、最も厳しい入国条件なのは言うまでもない。
仕方がないので、欧州の出場13ヶ国への訪問を相棒のヨモケンと2人で手分けして済ませ、日本へ一時帰国することに。帰国期間中の4月7日に日本対セルビアの親善試合があったので、東京から大阪に出向いてスタジアムで観戦したが、代表選手たちの不甲斐ない戦いっぷりには正直げんなりした。
日本でビザを入手した後、パリ経由で4月15日にアルジェリアへ。実は前日にアイスランドの氷河で火山が噴火し、ヨーロッパ大陸の北から南へ火山灰が押し寄せていた。首都アルジェ到着後にニュースをチェックすると、シャルル・ド・ゴール空港は閉鎖されたところ。離陸が数時間遅れたらパリで足止めを喰らい、W杯出場32ヶ国踏破は幻に終わっていただろう。危ないところだった。
一大プロジェクトの最終国の大地を踏みしめ、さぞや感慨に浸るかと思いきや、意外と冷静な自分がいた。この地もしょせん通過点であり、最終目標である南アW杯を楽しみ尽くして、ようやく達成感に酔いしれることができるのだろう。
アルジェでは街中で検問が行われており、警官が小型の機器を胸元で掲げ、通り過ぎる車にかざしている。スピード測定器かと思い、現地駐在員に尋ねると「あれは爆弾探知機ですよ」。さすがは国家非常事態宣言発令中の国だ。警官が全市民を監視するような物々しい雰囲気は、初めて味わうものだ。
サッカーボールの力で世界に平和を
そんなアルジェでも、平和を感じさせる場面に出会うことができた。世界遺産にも登録されている旧市街カスバを散策していると、少年たちが広場でストリートサッカーをしていた。僕らも仲間に入れてもらい、ボロボロのボールを蹴り合ってゴールに歓声を上げる。言葉が通じなくとも、サッカーで感情を分かち合うことができた。
数日後、「世界一蹴チャリティー企画」として新品のボールを買い、広場に戻ってプレゼントした。子どもたちは満面の笑みを浮かべ、新しいボールを追いかけている。ここがテロ多発国家であることを忘れてしまいそうなくらい、平和でのどかな光景だった。
外務省の危険情報のチェックは怠ってはならないし、「渡航の是非を検討してください」という勧告にも耳を傾けるべきだ。しかし、我々がこの眼で見た風景もまた、アルジェリアの一面である。戦争もテロも関係なく、サッカーボールがあればみんなが笑顔になれる。
W杯が開催される南アフリカでも、貧困や治安の問題が山積みだ。それでも4年に1度の「世紀の祭典」に国民が沸き、サッカーボールの偉大な力によって世界に平和がもたらされることを切に願っている。我々もチャリティー企画を継続し、南アフリカの子供たちに笑顔を届けるつもりだ。
※ツイッターやってます(http://twitter.com/atsushi_libero/)。W杯本戦期間中も、スタジアムからリアルタイムでつぶやきます。
アシシ@東京(W杯本番に向けて充電中)