竹下通り事件に見る 「デマ」拡散のかたち

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   1か月ほど前、原宿・竹下通りで将棋倒しの事故がありました。

   アイドルが来るとのデマがネット上で流れ、メールやツイッターを通じて爆発的に広まってしまったことが原因と考えられています。

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格段に上がった口コミ拡散のスピード

「竹下通りがパニックなう」の情報が駆け回った
「竹下通りがパニックなう」の情報が駆け回った
「あの日、午後4時ころに偶然、山手線に乗っていて原宿駅を通りがかったんだ。いつもよりも多い人出だな、とは思ったけど、春休みだったし、あまり気に留めてなかったのよ」

   30代の女性デザイナー、Aさんが言いました。

   Aさんが「あまり気に留めなかった」のは、原宿駅からほど近い場所に、「ジャニーズショップ」があることを知っていたからでした。

「春休みで、地方から来た娘たちがジャニーズのショップに集まってるんだろうな、と。ああ、可愛いもんだな、ぐらいにしか考えてなかったわ」

   その後、新宿駅の乗降で座ることができたAさん。習慣でケータイのニュースを見て、将棋倒しのことを知りました。

   何か新しい情報はないかと、ツイッターにもアクセスしてみます。

「ツイッター上には、デマとなったメールの原文らしきもののほかに、現場を写した画像もあった。私は見れなかったけれど動画もアップされていて、情報早っ!って感心することしきりだったのよ」

   なるほど、ネット上を情報(口コミ)が駆けめぐるスピードは、いよいよ速まってきました。

   と、そこまでは良かったんだけど、とAさんが続けました。

責任感を薄める伝言ゲームの「流儀」

「そのうち、話題の中心がちょっとズレ始めちゃって。デマで流れた男性アイドルに配慮して、事故を報じる新聞記事の見出しや内容が、女性アイドルに改ざんされた、って陰謀論が中心になっちゃった」

   その陰謀論もまた、異常なスピードで広まっていきます。

「本当に改ざんされたのか、本当にそういう配慮があったのかどうかなんて、根拠もないし、本当のところはわかんないのにね」

   陰謀論は、末尾に「(笑)」や「w」を付けて、どんどん広まっていったようです。

   冗談めかした記号を付けることで、信憑性を留保したり、広める責任を回避しようとする心理が働いていたのでしょう。

   しかし、本当に疑問を感じていたのであれば、そんな情報は転送せずに捨て置くべきです。

   尻馬に乗り、面白がって無責任に伝言ゲームを始めてしまうと、途中で「(笑)」などが脱落して、本当のことだと誤解してしまう人も出てきかねません。

   ネット上の情報は、言うまでもなく玉石混淆です。しかし、それは現実の社会も同じこと。

   ネット上でも現実でも、情報のなかに玉を多くするのか石を増やしてしまうのか。実はユーザー一人ひとりの態度やモラルが決めていくことなのです。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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