不況で労働市場は冷え込んでいるものの、転職に対する悪いイメージはだいぶ払拭された。人材の流動化は今後いっそう進み、「年下の上司」や「年上の部下」と働くことも当たり前になるだろう。そんな時代には、職場で何に気につけたらよいのだろうか。
雑用をいとわず、過去の成功をひけらかさず
――タテマエはともかく、やはり年齢(世代)差のある人間関係は複雑だ。とくに上下関係が入れ替わればなおさらである。・・・(年下の同僚との距離感に戸惑う一方)最近は15歳ほど上のヘッドハンターと一緒に仕事をする機会もあり、これまた距離の取り方が難しいことを痛感している。
そして正直にいえば「あの人と一緒に仕事をすると(あるいは同じ部屋にいるだけで)、こっちのモチベーションが下がるなあ」と思うこともないではない。
だが、よくよく相手と自分を観察してみると、別に年齢差があること自体が不快の原因になっているわけではないのである。同じくらい年齢差がある人でも、著者と気心が知れている人もいるからだ。
かといって、これを単なる相性の問題として片付けてしまうのも違うような気がする。言葉でいうのは難しいのだが、結局のところ、容姿と言動の両面で相手に年の差を感じさせないつきあいができるかどうかということではないかと思っている。
これをより具体的にいえば、生物学的年齢にかかわらず好奇心やチャレンジスピリットにあふれ、雑用などもいとわないフットワークの軽さを持ち、謙虚で、決して「最近の若い人は」的な発言をせず、さらに自分の過去の(成功)体験をひけらかさず、また、それにとらわれないといった行動特性を持つ人が、年を感じさせない(若々しく見える)のではないだろうか。
実際、そういうタイプの知人とは、どんなに年齢が離れていても違和感が少ない。だが、いま著者が紹介した苦手なヘッドハンターはその逆で、とにかくフットワークが悪く、周囲に沈鬱なムードを醸し出す人なのである――
(蟹沢孝夫著「ブラック企業、世にはばかる」光文社新書、182~183頁)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
「貫禄がある」「威厳がある」が誉め言葉だったのは、一昔前のことのようだ。年の差を感じさせない「容姿と言動の両面」というところがポイントか。言動を工夫することはできそうだが、容姿も若々しくいるのは簡単ではない。雇用流動化が進むにつれて、相手に与えたいイメージを意識して服装や髪型を選んだり、体力づくりをしたりすることは、より重要になるのかもしれない。