今回はあらためて「ビジネス敬語」の意味を考えてみましょう。社内外の人と話をするときに、ビジネスマナーとして「敬語を使いなさい」と教えられたのはなぜでしょうか。「それが慣習だから」と考えているだけだったら、残念なことです。
仕事を円滑に進めるための必要な手段
なぜなら、敬語に対する認識が浅いと、それを使う効果が半減してしまうからです。ビジネスシーンにおいて、敬語は、
「私はあなたを一人前の大人として敬意を持って接します」
という思いを、言葉で表現するものです。
これが相手に上手に伝われば、相手は「この人は私を大切に扱ってくれているんだな」という気持ちを持ってくれます。こうしてお互いに好印象を持てば、必然的によい仕事ができる基盤ができます。
仕事をするのは、生身の人間です。お金を払えばどんな態度でも、頼んだ仕事は上がってくるのかもしれませんが、尊敬の感じられない態度を取られ続けていると、
「次からはもう引き受けたくないな」
「頼まれた以上のことはしたくないな」
と内心思いながらの仕事になってしまいます。
こうなると、手抜きが起きたり、長い目で見た仕事の質が落ちてしまうというのは、心当たりがある人も多いのではないでしょうか。ビジネス敬語は、仕事を円滑に進めるための必要な手段なのです。
もちろん「慇懃(いんぎん)無礼」という言葉もあるように、過剰な敬語を使うと互いの間に壁が出来てしまいます。また、フランクな話し方で距離が縮まることも誰もが経験しています。しかし、正しい敬語を知らなければ、失礼なことをしてしまうおそれもあります。
和服でも洋服でも、正しい着こなしを知らずに着崩している人は、本人がいくら粋がっていても、見る人が見ればみっともなく見えるものです。
「相づち」はビジネス敬語の第一歩
このようにビジネス敬語は、仕事相手との良好な関係を作り、維持するものですが、敬語以前に気をつけておきたいことがあります。それは「相づち」の打ち方です。取引先や目上の人に対して無意識のように「うん」と答える若者がいますが、ビジネス敬語のルールからは逸脱しています。
また、何に対しても「マジで?」と返す人もいますが、これと同じノリで「本当ですか?」を連発すると、言葉が丁寧になったとはいえ、「この人、信用してないのかな」と不快になってしまうことがあります。
「なるほど」という相づちも、相手の言ったことに対する納得を表しているのでしょうが、これも連発すると「ずいぶん上から目線だな。偉そうな若者だ」と受け取られることがあります。
基本は、相手の目を見ながら「はい」と明るく言うことです。また、タイミングや頻度にも注意しましょう。相づちにはその人の癖が出ます。ときどき、自分がどういう相づちをしているか、意識的になってみましょう。
この季節は、新人の振る舞いが気になります。ただ、最初から落ち着いてビジネス会話ができていた人はいません。他人に厳しい人は、自分も高い基準を持っているものですが、そういう人は若いころに厳しい教育を受けた経験がある人です。
態度のなっていない新人を見て頭に血が上ったら、こんなこともできないのかと、いきなり怒鳴りつけるのではなく、
「自分も最初は出来ていなかった」
と思い出し、一息ついてから落ち着いて注意するように心がけた方がいいでしょう。
西出博子