月間45億ページビューを誇る日本最大級のニュース配信サービス、ヤフー・ニュース。ここで取り上げられたサイトは、アクセスが集中してサーバがダウンし、商品がバカ売れするという「神話」がある。トピックス編集部長の奥村倫弘氏は、そんな状況の中で憂慮していることがある。
消費者にメリットある情報発信が近道
――企業の広報担当の方にお会いするたび、「私どものニュースをトピックスで取り上げてほしいのですが、どうやったらいいのか、その方法を教えてもらえませんか」という質問をよく受けるようになりました。
残念ですが、そんな方法はありません。ニュースは公平性が求められるサービスですので、お金を積めば掲載のチャンスがあるなどということは間違ってもありませんし、編集部員と人脈を作れば掲載されやすくなるということもありません。
・・・情報提供契約を結ぶ150の報道機関から送られる一日3500本の記事から、トピックスとして掲載するのは約60本に過ぎないということは、先に書いたとおりです。さらに、社会性の高い記事を優先して掲載しているのですから、企業の広報を目的とした記事がトピックスに掲載されるのは、ある意味、宝くじに当たるようなものです。
そうであるにもかかわらず、「ヤフーのトピックスに必ず採用される方法を教えます」という文句で商売したり、「トピックス掲載必勝法」というようなあおり文句を掲げて講演会を主催したりするPR会社を見かけます。その商売の仕方に心が痛みます。そんな必勝法などどこにもないのに、なぜ企業の足元を見てお金を取ろうとするのでしょうか?
・・・企業広報やプロモーションの目的は、自社の良いイメージを作っていくという皮相なものではないはずです。単にお金儲けをするだけでなく、企業活動を通じて社会に貢献していける何かがあるからこそ、その企業には存在価値が認められるのだと思います。
もし企業が発信している情報が、単なる金儲けの「売らんかな」の宣伝ではなく、「世の中を良くしたい、いい方向に変えていきたい」という情熱や信念に支えられている価値あるものであれば、その思いは報道機関の記者にも届くことでしょうし、トピックス編集部もご一緒したいと思っています――
(奥村倫弘著「ヤフー・トピックスの作り方」光文社新書より抜粋)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
著者は元読売新聞大阪経済部記者で、現ヤフー・トピックス編集部長。編集部の一日や見出しづくりの工夫が書かれていて興味深い。また、全体からニュースに携わる人の「社会的な責任」や「倫理観」に対する強い意識が伝わってくる。記事や企業サイトをトピックスで取り上げてもらうための小細工は通用しなさそうだ。