耳の痛い「忠告」を受け入れることができるか

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「あの言い方だと、あの人、気分悪くするかも。謝った方がいいよ」

   職場の同僚からそんな指摘をされたら、あなたはどうしますか? あるいは、先輩から「仕事の進め方」について忠告されたら、どうしますか?

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心地よい言葉だけが「善意」ではない

   自分のやり方に自信満々な人は、「いいんですよ、こっちが正しいんだから」と言うでしょう。大人の態度ができる人なら「ご指摘ありがとうございます。参考にさせていただきます」と感謝の言葉を返すかもしれません。

   しかし、問題はここから。その忠告を素直に受け止めて行動を起こすかどうか。人によって道が別れます。

1.自分のことは自分で決める。耳を貸さない
2.とりあえず忠告を実行してみる
3.忠告の意味を考えてから行動を改める

   とにかく他人からダメ出しされることが大嫌い。正しい指摘だと気づいても、気分を害して「いま直そうとしたのに、言われたからやる気なくなった」と子どものようにひねくれた反応をする1のタイプの人は少なくありません。

   自分の頭で考えることは大切ですが、プライドが邪魔して態度を頑なにするのはよくありません。なぜ耳を貸せないのか。それは、相手の忠告を善意で受け止められないからです。心地よい言葉や態度を表す人が善意の人であると思っているのでしょう。

   ところが、この考え方は真逆で、忠告してくれる行為こそが善意なのです。そもそも職場の同僚は友だちではないので、お互いが踏み込んで会話する必要はありません。そんな職場で同僚が忠告してくれるのは、

・改善した方が本人のためになると考えている
・本人が気づかずに他人に迷惑をかけていることを知らせている

わけですから、善意がなければできないことなのです。忠告の仕方が厳しい内容であればあるほど、本人にとって聞きたくない重要なことであることが多いですし、忠告してくれた人は言いたくないことをあえてしてくれたのかもしれません。

素直になれないときは「贈り物」と考える

   実は私も若き営業マン時代に、職場の先輩から、

「もっと周囲の関係者に感謝の言葉を伝えないと、仕事がやりづらくなるよ」

と言われたことがありました。当時は自分の方が高い業績を出していたので、やっかみなんだろうと思っていました。

   ところが事実はまったく逆で、契約関連の不備が多かったのを管理部門の人たちが陰でフォローしてくれていたのにもかかわらず、「自分の力だけで仕事をしている」と勘違いしていたのです。実はうすうす感づいていたけれど、そのくらいはやってくれて当然だと思っていたのかもしれません。

   つまり先輩は、調子に乗っている私が周囲の人たちから「最後までしっかりできないダメな奴」と冷ややかな目で見られていることに早く気づいた方がよいと、善意の気持ちから忠告してくれていたのでした。

   後で忠告の意味に気づくことができたので、事なきを得たのですが、もし先輩が忠告してくれなかったり、その意味に気づかなかったりすれば、私の仕事の進め方のまずさが大問題に発展していたかもしれません。本当にありがたい出来事でした。

   ただ、誰でも自分の欠点には目をつぶり、嫌なことにはふたをしたいもの。忠告されるとムッとしてしまう人もいるでしょう。そうならずに他人の忠告に耳を傾けられるようになるヒントとして、忠告されたら

「忠告は善意の贈り物だ」

と考える習慣をつけてみてください。素直になれない気持ちが少しはやわらぐはずです。

   理想的な行動は、3の「忠告の意味を考えてから行動を改める」でしょう。なぜ忠告をしてくれたのか、その背景や理由について考えをめぐらせることで、自分のマズさに気づくことができます。ただ、そこまで分からなくても、2の「とりあえず忠告を実行してみる」ことだって意味があると思います。自分が変わることを拒否すれば、成長はありません。

高城幸司

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*2010年3月、新刊「トップ営業のフレームワーク―売るための行動パターンと仕組み化・習慣化」が東洋経済新報社より発行されました。
高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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