リクルートは2010年4月7日、「就職志望企業ランキング」を発表した。回答者は11年3月卒予定の大学生・大学院生1万4685人。それによると、大学生の「働きたい企業」総合ランキングでは、JTBグループが1位を獲得した。
メディアへの露出の多さが勝因との見方も
同グループは2010年から「地域ごと採用」が「合同採用」となり、集計方法が変わったことでランク外から首位に躍り出た。毎日コミュニケーションズの「大学生の就職人気ランキング」でも、ここ10年で9回も1位となっている。学生人気は根強い。
キャリア教育プロデューサーの新田龍氏は、この理由を「学生との接点の多さ」に見る。
「JTBはメディアへの露出が多いですね。採用広告に力を入れ、会社説明会なども積極的に開いて学生と接する機会を多く設けたことが功を奏していると思います」
学生の親も、会社の安定性や公共性に好印象を抱いているという。また、募集人員が多いことも影響しているようだ。
「グループ全体で200社あり、全国展開もしているので求人数が多く、競争率が低く入りやすそうに見えるのでしょう。出身地での就職を希望する人も多いようです」
JTBでは、多くの会社で採用を見送っている一般職での募集もある。女子学生で2位に大差をつけてダントツ1位なのは、そういう理由かもしれない。
ただ、若者の旅行離れや、旅行単価の下落など、業界には逆風が吹いているとも報じられている。ネット上には、ランキングに首を傾げる意見が見られた。
「旅行会社なんて、この先の鳩山大不況で真っ先に経営難に陥りそうだが」
「いまどきの学生さんは経済ニュース読まないのかなあ」
人気企業が求めるのは「変革を主導できる人材」
また、旅行会社は入社前と後の印象の差が大きく、離職率も高いという評判も耳にする。生活総合情報サイトのオールアバウトで「大学生のキャリアプラン」を担当する見舘好隆・北九州市立大学キャリアセンター准教授は、「学生の旅行業界へのイメージがあまりにも良すぎて、現実に即していない」と指摘する。
「過去に旅行会社で勤務していたからこそ断言できるが、これは旅行会社が『現実的な仕事情報の事前提供』をあまりしてこなかったことが原因の一つと言える。現実の勤務時間や仕事内容、待遇面など、もっと大学生に仕事の現実を的確に伝えていれば、ランキングはかなり変わったはずだ」
要するに、会社のよいイメージばかりアピールするから、学生が勘違いをするということか。ただ、自社のマイナス情報を積極的に出せと言っても現実には難しい。学生はイメージに流されず、当事者意識を強く持って仕事探しをすべきだろう。
その他、ランキングの2位以下には、JR東海、JR東日本、日本郵政と、いかにも安定感のある会社が続く。この結果について新田氏は、就活学生が抱く甘い期待に注意を促す。
「規模の大きい会社を希望するのは自由です。ただ、会社が安定していて仕事が楽そうだとか、クビになりにくそうという見方は正しくない。彼らが保守的な人材を求めていると勘違いすると、門前払いを食らうことになります」
これから日本は人口が減り、内需市場の成長は大きく見込めない。高速道路の割引で鉄道会社や航空会社の業績が悪化したり、電力会社とガス会社が家庭用エネルギーの分野でつばぜり合いをするなど、限られたパイの奪い合いが激しくなっている。
「内需に頼る企業こそ、新しいビジネスモデルを生み出せる変革主導型の人材を求めている。そのつもりで求職に臨むべきです」