2010年4月4日にWEB本の通信社の書籍紹介に掲載された「『お前は何様だ!』と怒鳴られた就活生」というコラムが、ネット上で話題になっている。リクルート出身の人事コンサルタント、前川孝雄氏の書籍紹介として書かれたものだ。
学生を「何様だ!」と罵倒した40代管理職
それによると、前川氏が就職セミナーで講演したとき、質疑応答でひとりの大学生がこんな質問をしたという。
「お話を聞いていると、自分のやりたいことがあっても、それをねじ曲げて会社に合わせろと言っているように聞こえます。僕はやりたいことがあります。どうしてそれをねじ曲げてまで会社に合わせないといけないのですか? それが就職というものなんですか?」
すると、隣の席で聞いていた40代の管理職が、突然烈火のごとく怒鳴り始めた。
「お前は何様だ! そんなにやりたいことがあるんだったら、就職なんてしなくていい。ひとりで会社でも作りなさい!」
そして前川氏が控え室に帰るときに、この管理職が来て「さっきの彼いいね」「あいつみたいな奴が部下なら、徹底的に鍛えたいな」と言ったのだそう。
確かに、就職セミナーとは、既存の会社に就職を希望する学生が集まるのが前提だから、「どの会社を選べばよいか」「どうやったら採用してもらえるか」という話が中心になるのは当然だろう。学生の質問は場違いともいえる。
しかし、働くことに対する自分なりのスタンスを決めかねている学生が、質疑応答の時間に講師に自分の疑問を投げかけてもよいはずだ。なのに、なぜ公衆の面前で罵倒されなければならないのか。これにはネットユーザーは黙っていない。
「会社のいいなりで生きてきたオヤジの地雷(を踏んだな)」
「カッとなって怒鳴りつけちゃって、さすがにマズイと思って、あとから取り繕ったんだろ。見え見えだっつうの」
「あえて怒ってみせて威圧して、最初に優劣と上下関係をハッキリさせる。そして自分の手元に置いてから『俺が育ててやる』。マインドコントロールだ」
いつになれば「やりたいこと」主張できる?
それでは、学生に対してはどんなアドバイスをしてあげればよいのか。そんなに悩むような話ではないというコメントがあった。
「やりたい事を実現出来る会社に就職しなさい、と言うべきなのでは」
「自分の信念と会社の方針を照らし合わせて、お互いにマッチする会社を選べば問題ないわけだよね」
ただ、会社が採用したいのは、会社の方針に沿って貢献してくれる人。自分の信念だけ主張する人は使いにくいし、それを不満に思うのはお門違いというものだ。少し意地悪だが「やりたいことができる会社が見つかるまで就活していなさい、と言ってやればよかろう」という意見も分かる。
また、質問した学生がいつか独立して事業を起こしたいとしても、一度はどこかの会社に就職して働くメリットはあると助言する人もいた。
「少なくとも何年間かはサラリーマンやって、基本だけでも身に付けた方がいい。大学生からそのまま起業しても、日本社会では上手くいかないと思う」
コラムでは、管理職が怒鳴った理由について、本当にやりたいことができるのは「社会人として20年くらい経って、人と組織をちゃんと動かせるようになってから」と知っているからと説明している。しかし、この価値観は将来にも通用するのだろうか。
「はっきり言って遅すぎるわ。時代はその1000倍のスピードで動いている」
というコメントもあった。1000倍は大げさかもしれないが、20年後に今と同じような日本企業のしくみが残っているとは信じがたい。