「脱ケータイ」は正しい社会人への第一歩

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「ネットで『脱オタ』とか言うじゃないですか。最近、私『脱ケータイ』してるんですよ」

   そう言うのは、昨年4月に新卒で入社したA子さん。

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必需品だからこそ少し距離を置く

   まさにケータイ世代ど真ん中なのに、なぜ脱ケータイなのか。

   訊ねてみると、意外な答えが返ってきました。

「おっしゃるとおりケータイ世代なので、一時はお風呂に入る時もドアのすぐ外、脱衣所の手に届く場所に置いておく、ぐらいの勢いだったんですけどね。
   でも、よくよく考えてみたら、無駄というか、どうってことないメールや通話がほとんど。で、社会人になって研修だなんだで忙しくなったのを機に、必要のない時以外、ケータイを手にしないってやってみたんです」

   きっかけは、疲れ果てて帰宅したある夜、眠気に勝てず、古い友人からかかってきたコールに出なかったことでした。

「あ、出なきゃ、とは思ったんですけど、もう眠くて眠くて。ごめんって思いながら寝る方を優先したんですが、翌朝起きて入っていた伝言を聞いたら、『やっほー、また遊ぼうねー』。それぐらいのことなら、後からメールで『ごめん、寝てた、また遊ぼ』って入れときゃいいかって」

   付き合いが悪くなった、会社に入って人が変わった、などと陰で言われていると忠告してくれる友人もいたそうです。

「でも、そうやって離れていく人とは、遅かれ早かれ離れる運命なんじゃないかと割り切りました。本当の友達は、あの娘、ケータイとか出ないけど、伝言かメール入れとけば、ちゃんと返事してくるからって(笑)。そういう存在として認めてくれてるんです」

   脱ケータイして、何か変わったことはあったのでしょうか。

「一日が長くなって、少しずつ規則正しい生活になってきています。規則正しくなると、疲れも以前より感じなくなってきたように思いますね」

   生活の必需品だからこそ、それに振り回されないようにする。

   なるほどな、と考えさせられました。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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