「第二就職氷河期」を防ぐ現実的な方法

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   2010年2月1日時点の就職内定率が昨年比で6.3%も下落し、過去最低を更新した。元祖氷河期の底である2000年を下回ったことから、今回の就職氷河期が元祖以上の寒さであることは確実となった。それだけ、現在の日本企業が余剰人員を抱えこみ、かつ先行きが不透明であるということだ。そういったツケはすべて新卒者が負担することになる。

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基本給の「4か月分上乗せ」で解雇可能に

   抜本的な対策は、いつも言っているように正規雇用全体の規制緩和と流動化しかないのだが、これはハードルが高すぎる。いや、日本以外ではどこでもやっている話なのでけして難しいわけではないのだけど、少なくとも連合陛下バンザイ!の民主党が与党にいる限りは絶望的だ。

   というわけで、ここはひとつ発想を変えて、入口の流動化から検討してはどうだろうか。つまり、これから就職する人間にだけ、特例的に金銭解雇や処遇の変更を柔軟に認めるルールを作るのだ。

   たとえば従来だと、派遣や契約社員であっても、一定期間業務に従事すると、期間の定めのない雇用契約(=終身雇用)だったとみなされるリスクがあった。これをなくして、たとえば基本給の4か月分上乗せで、雇用形態にかかわらず解雇可能であるというルールを作る。これは日本人一人採用するコストを大きく下げることになるから、結果的に雇用の椅子は増加するはずだ。

   これにより、正社員の残業や海外流出によって発散している雇用が、ある程度は彼ら新卒者に割り振られることになるだろう。これは正社員の残業時間抑制にもつながるわけだから、労組にとっても悪い話ではない。

正社員システムでは一部の人しか幸福になれない

   むろん、これは完ぺきなプランではない。既存正社員とのダブルスタンダードは残るから、これ以降の世代は雇用調整のリスクを引き受けさせられる緩衝材として使われるだろう。

   ただし、それは現状の日本型雇用においても同じことだ。成果主義の名の下、ベテラン社員の基本給を守るため、若手正社員の昇給昇格は制限され、日テレのように「新人から別給与体系で賃金3割カット」なんてことを平気でやる企業もある。それなら思い切って、そのダブルスタンダードを合法化してしまえということだ。

   他にもメリットはいろいろある。たとえば、若者は多くの職場に“準正社員”としてもぐりこめ、職歴が積める。数年後に景気が良くなったら、そのまま正規雇用に切り替える企業もあるだろう。そこまで上手く話が進まなくても、キャリアを利用しての再就職活動はスムーズに進むはず。

   我々の世代は、がちがちの正社員システムだけでは一部の人しか幸福になれないことを、身をもって学んできた。特に新卒でこけて20代でキャリアを積む訓練が疎かになってしまうと、その後の挽回が著しく困難なこともだ。

   「全員正社員が基本だ」「いや、完全流動化だ」という議論にこだわるあまり、同じ過ちを繰り返すべきではない。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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