ケータイメールで「ニュアンス」伝わらないワケ

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「なんとかならないもんでしょうかねぇ…」

   都内に住む、マスコミ関係のSさんが言いました。

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「ハート」「おどろき」に化けてしまう

絵文字のあるなしで印象がガラッと変わる
絵文字のあるなしで印象がガラッと変わる
「スポーツ関係を担当している仕事柄、雰囲気や勢いを伝えなくちゃならないことが多いんです。そこで、ケータイメールで絵文字を頻繁に使うんですけど、キャリアによっては絵文字がちゃんと変換されないんですよね」

   たとえば、「緊急」ということを伝えるためにビックリマークを使うと、相手方のケータイには「○○○ おどろき」、「ごめんね、でも悪気はないんだよ」ということを伝えるためにハートの絵文字を使うと、「ごめん ハート」というように、絵ではなく文字で変換されてしまうのです。

「書きたいことの意味を和らげたり、文字オンリーでギスギスしそうな時に絵文字を使って直接喋ってるようにしたいのに、『おどろき』とか『ハート』とか『笑う顔』とかって変換されると、めちゃくちゃ興醒めです」

   GIFアニメで「笑」が踊っている絵文字を、「笑い」と単なる文字に変換されては、たしかに真意が伝わらないということはありそうです。

   なにより、コミュニケーションの重要な要素である「ニュアンス」が伝わらないという不安があります。

「主要3キャリアのうち、2つはちゃんと変換されるんです。でも、1つだけは文字になっちゃう。なんとかならないんですかね?」

ユーザーの興味は「周辺機能」の優劣へ

   Sさんによれば、仕事関係で「絵文字が化けてて気持ち悪い」と不評を買うことがあるほか、日常的にメールをやり取りする奥さんからも、いつも文句を言われてしまうのだとか。

「もともとのキャリアのほかに、嫁さんのキャリアのケータイをわざわざ新規で契約させられましたよ。絵文字が使えないのが嫌だって言って。たかが絵文字のために2台分の契約をしているのって、そりゃ無駄だなって思います(苦笑)。
けどね、物心ついた時からケータイが手元にある世代の嫁にすれば、絵文字がちゃんと出てこないのは、気持ち悪くて我慢ができない、って言うんですね」

   ケータイが生活に根付き、コミュニケーションの重要なツールとなったからこそ、気になる細かな仕様。供給側からすれば、どうでもいいような細かいことかもしれませんが、使う側からすれば、黒板を爪で引っ掻くように、気に触る使い勝手。

   つながる、音声品質、といった要素は、もはや当たり前のことになってしまったのでしょう。ケータイを使い慣れたユーザーは、キーの押し心地や変換の正確性(あるいは、シャレ度)といった、“周辺機能”の優劣に興味が移ってしまっているのではないでしょうか。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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