実は2010年2月19日、この連載を加筆した『できコツ』という本を講談社から出版することになりました。どこかでご覧になったら、お手にとってみていただければ幸いです。今後は、本に書ききれなかったことを中心に、何回か連載を続けさせていただきます。
周囲を非難することは未熟さのあらわれ
われわれ凡人は、さほど能力が高くないので、仕事で目立つことはあまりできません。それでも、機会を見つけて成果を上げて、高い評価を得たいものです。一方で、日本には残念ながら横並びをよしとする風潮があり、出る杭を打ってやろうと狙っている人たちがたくさんいます。
できるヤツは「自分は正しいことをやっているのだから、周囲が何と言おうが気にしない」と思えます。彼らには自信があるし、叩かれても潰されずにはね返せるのです。一方、大多数の凡人は出る杭となる経験が少ないので、叩かれると意気消沈してしまいます。
はねかえす力をつけることも必要ですが、凡人は物事をなしとげるときのために、まずは周囲の人の力を積極的に借りられるようにしておきましょう。そして、もしも「出る杭」になったときに叩かれないように、上司や先輩、同僚との人間関係を良好に保ち、信頼関係を築いておくのです。
特に若い人は往々にして、周囲をむやみに非難して関係を悪化させることで、あたかも自分の力が高いように見せかけようとしたりします。でも、そんな振る舞いは、単に周りを見極められない未熟さをあらわにしているようなものです。
慶大教授の福田和也氏は、『岐路に立つ君へ』(小学館)という本の中で、こう述べています。
周囲から賛同を得られる「出る杭」を目指して
「僕も時々、仕事で不作法な人に会う。挨拶をしないとか、とても高飛車な態度をとるとか。でも、僕はそういう人にたいしては、ある種の安心をしてしまう。
というのは、そういう人というのは、結局たいしたことがないんだね。不作法な態度をとるというのは、相手を見くびっているということだ。
見くびるというのは、失礼である以前に、認識が甘い、ゆるい、ということなんだな」
他人に足下をすくわれるのは、相手を大したことがないと油断して見ている時です。いずれにしても一人でできることには限りがあるし、大きなことをしたいのならば他人と力をあわせて、周囲から賛同を得られる「出る杭」になった方がハッピーです。甘い認識で他人を見くびることは禁物です。
私自身、短期間で3度も会社を辞めたときには、何の成果も上げられず、力もついていないクセに生意気なことばかり考えて突っ張っていました。しかし、4度目の会社で目覚め、「使い物にならない」と捨てられる恐怖心から、率先して仕事を引き受けて経験を積み、社内の人間関係を広げて仕事を教わってきました。
結局独立しましたが、その時の経験がなければ何の力も身についていなかったでしょう。夢を諦めなかったことはよかったと思いますが、早く自分と周囲を見極められていたら、いまごろもっと力がついていたはずと思うことがあります。でも、その悔しさが今に生きています。
多くの支えで本を出すことができた今でも、知名度と実力のギャップがあることは自分でも意識しています。最終的に「あいつだったらしようがないか」と言われるポジションを獲得するために、これからも凡人ならではの戦略を大事にしていきたいと思います。
野崎大輔