ネット上の個人情報 「発信」と「保護」のはざまに

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   石巻市で悲惨な殺人事件が起きました。

   ネット上の掲示板サイトでは、ニュースサイトの第一報からたった15分ぐらい後に、犯人や被害者の個人情報が突き止められていました。

発信やめればコミュニケーションも止まる

   プロフなどケータイから書き込めるサイトに、本人が書き込んでいたデータが検索によって掘り起こされて(サルベージされて)しまったのです。

   筆者も確認しましたが、過去にも事件があるとネット上の個人情報がサルベージされていたことが何回かありました。大きく報じられたケースもあって、迂闊に自分にかかわる情報をネットにはアップしないという教訓は、すでに周知されたことかと思っていたのですが、そうでもないのかもしれません。

「私の家でも、夕食の時に中学生の子供とネット上の自分の情報について話しました」

   そう言うのは、近畿地方に住む自営業のAさん。

   彼の子供もプロフを持っているようだったので、心配になったのです。

「子供たちは、ネット上に書き込んだ自分の情報が悪用されることについて、一応の心配はしているようでした。もう止めてしまおうかとも思っているみたいでしたが、決心がつかないみたいですね」

   たとえば、まったく自分とわからないようにしてしまうと、これまでの友達や新しい知人に気づいてもらえない。かといって、完全に止めてしまうとなると、一斉にみんなで止めるならともかく、一人だけ止める度胸がない。

「まあ、そういう気持ちはわかりますけどね。親としては、不安要素はないほうが良いので、やっぱり止めてもらいたい。でも、子供に強制はしたくないんです。ネットの危険性に気づいて自発的に止めないと、親に言われたからというのでは、いずれまた再開するでしょうし、結局は何も学ばないですから」

   いずれ再開というのでは、いつまでたっても親の心配のタネは尽きません。

「ケータイは日記を書く道具」という世代

   子供たちからすれば、いつも身近にあるケータイから書き込めるプロフなどのサイトは、自分だけの秘密の日記帳、あるいは秘密基地のようなもの。

   仲の良い友達に、自分の心情などをこっそり知ってもらう、重要な「連絡網」でもあるそうなのです。

「それなら、リアルの日記帳でもいいじゃないかとも思うんですが、子供たちは筆記具で書くよりもキーを打つほうに慣れちゃってるんですね。それにケータイだと、ちょっとした空き時間や、気の向いた時に打てますから」

とAさん。

「時間をかけて、徐々に危険性を学んでもらうしかない。それで、止めるなら止める、続けるならリスクを知って自分なりのヘッジをする、と」

   子供を信じて、親もネットの危険性を勉強しつつ、辛抱強く見守るしか手はないようですね、いまのところは。

井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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