よく、企業が学生に求める資質として「コミュニケーション能力」があげられる。いろんな調査を見ても、たいていトップ3には入っているから、幅広い業種で重視されているのだろう。
実力が問われるのは「表現力」のレベル
ところで、コミュニケーション能力というのは、具体的にはどういった能力のことだろう? 実は採用している企業の側も統一的な認識を持っているわけではなく、会社によってバラバラである。そこで「コミュニケーション能力とは何ぞや」について簡単にまとめてみたい。
いろいろ話を聞いていて思うのは、一口にコミュニケーション能力と言っても、どうやら3パターンに分けられるということだ。
①ホウレンソウ上手どちらかというと古い会社に多い。これを重視する企業では、組織の忠実な歯車としての役割が期待されているはず。
②調整能力一般的なコミュニケーション能力のイメージにもっとも近い。根回しとか人付き合いとか、そういった日本的な言葉で語られるものだ。近年、これが弱いと“KY”というレッテルを貼られてしまう傾向がある。ある意味、どこへ行っても必要な素養。
③表現力もっとも実力が問われるのがこれである。たとえば勉強したり本をたくさん読んだりするのは高等教育修了者としては当然で、問題はそれを適切にまとめて相手に伝えられるかだ。詰め込み型の知識だけではGoogleには勝てないわけで、「知識の使い方」と言ってもいい。コミュニケーション能力というよりは、表現力という方がニュアンス的に近い。アドリブのきいた質問を連発してくるような企業は、これを重視していると考えて間違いない。
読書の後にレビューをまとめる習慣をつける
さて、上記のようにそれぞれ意図している能力は違うものの、面白いことにこれらの能力にははっきりとした優劣がある。たとえば、①だけで評価する会社はいまどき少ない。一方で、①や②が好きな企業であっても、③のタイプを見れば喉から手が出るほど欲しがるものだ。
というわけで、これから身につけるとすれば、③だろう。そのためには、情報の吸収と編集、表現というプロセスを実地で経験する以外にない。もちろん、社会経験の中で身につけていくのが理想だが、普段の学習でもある程度はカバーできる。たとえば本を読んだら、レビューを1000字程度にまとめてみるといい。これは簡単なようだが、実に効果的な表現力の鍛錬になる。
そういったプロセスを踏まえずに、いくら「バイトで頑張って~」とか「サークルでリーダーで~」という話をしても、テーブルの向こうの面接官は退屈しているに違いない。
城 繁幸