長引く企業業績の悪化が、退職者の引き止めや中古オフィス家具市場に影響を与えているという調査結果が発表された。最近ではリストラで退職した人たちが独立し、中古オフィス家具を買って低コストで事務所を構える動きもあるという。
不景気で「退職時の引き止めなし」増加
リクルートエージェントと調査会社のインテージは、正社員の退職(会社の倒産・解雇などを除く)に当たって「上司からの引き止め」があったかどうか調査を行った。
それによると、2008年9月のいわゆる「リーマンショック」前に退職交渉を始めた人では、「引き止めはなかった」が27%だったが、リーマンショック後では36%に上がっている。世界的な景気悪化で売り上げが急激に下がり、固定費である人件費が負担になったことが上司の反応に表れたのだろうか。
またリーマンショック直後には、事業所の統廃合や外資系企業の撤退が相次いだ。これを受けてオフィス家具が中古市場に大量に流れたという。中古オフィス用品を扱うオフィスバスターズの大川氏は、当時をこう振り返る。
「問い合わせ件数が、急に普段の1.5倍から2倍に膨れ上がり、対応に追われました。大企業からの要請も多く、一度に4千脚もの椅子を引き取りに行ったこともあります」
オフィス家具は「中古でいいと思う」約9割
また、普段はあまり出ない高級家具も多く出たという。1年ほどして買い取り件数は落ち着いたが、現在は販売数に動きがある。
「これまでは新品以外に考えられないと言っていた大企業が、現物を見て『こんなにいいものがあるのか』と買っていくケースが増えましたね。また、早期退職制度などを契機に会社を辞めた人が、独立して事業を始めるために中古で揃えるケースも耳にするようになりました」
各社はコストダウンが経営課題になっており、「中古家具で経費削減しました」というアピールは、担当者の評価を上げるのかもしれない。ITバブルの頃は、若い社長が豪華なオフィス家具を揃えてマスコミに登場していたが、このご時勢では意識も変わっている。
調査会社のアイシェアとオフィスバスターズの共同調査によると、20代から40代のネットユーザーに「オフィス家具を中古品で購入することをどう思うか」と尋ねたところ、88.9%が「よいと思う」と答え、「新品にこだわりたい」のは1割程度にとどまった。
この需要増を受けて、オフィスバスターズでは中古オフィス家具セットなど新品定価100万円相当の商品を3万円(税別)で提供する「起業家福袋」を、2010年1月30日(土)まで販売しているという。