未経験の「営業会議の資料作成」を頼まれたら

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   仕事に慣れたつもりが、視点が足りていないために、期待されるレベルに達していなかった、ということが起こりうる。通信機器販社の営業部のPさんは、都内で新規開拓の営業に飛び回っているが、業績はそこそこ。仕事にやや飽きてきて、漠然と「何か新しいことやりたいな」と思う日々を過ごしている。

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「作ったことない」では済まされない

   ある日、Pさんは部長から呼び出され、営業会議での報告資料の作成を頼まれた。営業会議の取りまとめをしているベテラン主任が、急病で休んだらしい。でも、提案書や見積書を作る機会はあっても、社内会議の資料を作るのは初めてだ。

   「作った経験がないのですが」と切り返すと、「課長と相談して君に任せることにしたんだよ」という返事が。そこで、部長に作成する資料の具体的な内容を訊ねると、次のような資料を作って欲しいという。

●今月と来月の業績報告
●トピックスがあれば記入

   うん、これなら簡単だし出来そうだ。それに営業以外の仕事は新鮮だ、と考えたPさんは「了解しました」と返事をした。部長は「じゃ、あとは頼んだよ。完成したら、会議の事務局に提出しておいてくれ」と言い残して、別の会議に出て行った。

   部長はPさんの資料を、ノーチェックで会議に提出するつもりのようだ。不安がよぎるが、会議まであと2時間。まずは管理担当に実績数値をもらって集計表を作成。営業課長たちに「先月、課で何かありましたか」と聞いて回って、トピックス欄に記入。チェックも完了だ。

部長の苦言「会議の趣旨をどう考えた?」

   会議の事務職に提出したのは、指示されてから1時間後。「意外と簡単に終わったな。主任は普段こんな簡単な仕事しかしていないのか」などと考えながら、Pさんは自分の営業日報の作成に入った。

   一通り仕事を終えて「部長はきちんと説明をしてくれたかな」と思いながら、Pさんが帰宅の途につこうとしたとき、会議から部長が戻ってきた。何か不満そうな顔をしている。「レポート集計ありがとう。ひとつ言っておきたいことがあるのだけど、時間いいかな?」

   Pさんは、部長の部屋に通された。「怒っているわけじゃないがね、少しガッカリしたよ。君は営業として気が利く方だと聞いていたからね」

   部長の指摘は2つ。Pさんが、

●前回までのレポートを参考にしていないこと
●事務局に会議の流れを確認していないこと

に、問題があるということだった。「単に数字をまとめるだけなら、別の人に頼んだよ。君は会議の趣旨をどう考えた?単に、これだけ頑張りました、これからも頑張ります、という場ではないんだよ」

次工程の「当事者意識」を持って仕事をすべきだった

   部長が語る会議の趣旨は、「営業組織で共有すべき情報の提供」「現場で感じている問題意識の提起」だった。ところが、Pさんがレポートの挙げたトピックスは「Aさんが目標達成」「Bさんが大型契約」など、各課のPRばかり。「何かトピックスいただけますか?」と漫然と聞いていれば、そんな情報しか集められないのは当然だった。

   そこで、普段主任がまとめているレポートをあらためて見た。するとそこには「効果的な提案書を○○君が作成」「競合が新商品をリリース、要注意」など、部内で共有すべき内容が、精査されて書かれていた。これは日頃から営業部の動向をよく見ていなければ書けるものではないなと、Pさんはうなだれた。

「次の機会は、高い視点でレポートまとめてくれよ」

   部長に肩を叩かれ、先輩や上司たちが自分とは違う視点で仕事をしていることに気づき、大いに反省させられた。どんな仕事でも高い視点で、次工程で必要な材料を、当事者意識を持って集めて準備しなければならないと肝に命じたPさんだった。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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