今回から「稼げる人」になるための具体的な仕事術、処世術について、例を挙げて説明する。稼げる人は、大雑把に頼まれた仕事でも、さすがと思わせる行動をするものだ。その理由は、頼んだ相手が何を期待しているのか、「意図」を汲み取る力があるからである。
取引先からの電話をどうさばくか
本来、他人に何か頼むときには、内容をていねいに説明するべきだ。しかし忙しいときには、つい言葉足らずで済ませてしまいがち。私も部下に対して、
「これ、よろしく!」
「任せた!」
「うまくまとめて!」
「適当にやっておいて!」
などと、あいまいな指示をしてしまうことが時折ある(反省ですね)。ただ、これは上司や先輩が部下や後輩に何か頼むときに、どこの職場でもよくある話ではある。
こうした大雑把な頼まれごとの対処は、人によって大きな違いが出る。一例を紹介しよう。ある事務機器の営業部で、上司のAさんが部下のBさんに頼みごとをした。上司のAさんは社内の重要な会議を前に、バタバタと準備しながら、
「夕方まで会議で電話に出られないんだ。
悪いけど、お客様から連絡があったら対応よろしくな」
と頼むと、走ってフロアを出て行ってしまった。Aさんは営業部のたたき上げで、今でも直接担当しているお客様が何社もあるのだ。
さて、Bさんは午後から営業に出かけるので、頼まれごとを誰かに引き継がなければと思った矢先、電話が舞い込んだ。「佐藤物産のCと申します。Aさんはいますか?」
ここで、あなたなら、どのように行動するだろうか?
1:「夕方まで会議で不在です」と伝えて電話を切る
2:用件を聞いて、メモをAさんの机に残す
「メモを残す」「自分で対応」「急ぎで連絡」で仕分け
普通の人は、2の対応で終了だ。しかし、Bさんは「稼げる人」。「Aさんが会議から戻る前に対処しないと失うものはないか?」と考えて、違う行動をとる。
「私、同じ部署のBと申します。あいにくAは会議で夕方まで戻りません。ご用件は確実に伝えますが、お急ぎであれば可能な限り私の方で承ります」
と回答した。するとCさんは、「ああ、実は急ぎなんだ。稟議書を書いている最中なんだけど、料金の件で相談があるんだよね」。それを聞いたBさんは、これは自分で対応できる内容ではなく、かつAさんが席に戻るのを待っていては対応が遅れると判断した。そこで、
「恐縮ですが、私ではわかりかねます。至急、Aと連絡して回答させていただきます」
と伝え、会議中のAさんには《佐藤物産、Cさん連絡あり。見積りの件、至急相談》と書いたメモを、会議の事務局を通じてAさんに手渡してもらった。
Aさんはメモを見ると「至急」会議を抜け出し、携帯電話で佐藤物産に連絡。後日、契約は無事に取れて、Bさんは大いに褒められた。結局、会議は夜まで延びてしまい、途中でメモを入れなければ、商談は頓挫してしまうおそれもあったのである。
前回も述べたとおり、稼げる人とは、売り上げを持ってきた人だけを指すのではない。会社や上司からの指示に「ひねり」を加えて、付加価値の高い仕事をする人も、立派な「稼げる人」だ。
Bさんの行動のポイントは、「急がないと失うもの」を敏感に察知して、適切に対処したことだ。もし、すべての電話をメモに取り「電話あり」と伝えたとしても、会議の妨げになり、稼げる人とは呼ばれない。用件の「緊急度」「内容」などを考慮して、「メモを残す」「自分で対応」「急ぎで連絡」と仕分けすることで、仕事に付加価値がついて周囲の評価も高まるのである。
高城幸司