自分なりに努力しているつもりでも、なかなか結果が出ないことがある。そんなときは、どうやって現状を打開すればよいのか。北京オリンピックの競泳日本代表チームに招かれて「勝つための脳」について講義を行い、結果に大きく貢献した日大教授の林成之氏は、根性論で「がんばります」と繰り返すだけでは目標は達成できないと語る。
「がんばること」自体が目標になっていないか
――みなさんは常日ごろ、「目的」と「目標」を分けて考えていますか?
たとえば「がんばって契約を取ってきます」というのは、ただの「目的」です。
「目標」とは、契約を取るために何をするか、やるべきことを具体的にしたもののことをいいます。ということは、目的を達成するためには、いくつもの目標があることになります。しかしながら、それを明確にしないまま「がんばります」と言う人は少なくありません。
根性論で「がんばります」とだけ言っていても、脳は何をがんばればいいのかわかりません。「がんばります」は、脳にとっては意味不明な言葉なのです。
また、「がんばること」自体が目標になってしまうと、目的を達成しなくても「がんばったから」と納得してしまい、いつまでたっても目的を達成できないという悪循環に陥ることになりかねません。よく「がんばります」「今日はがんばった」などと口にしている人は、要注意です。達成すべき目標や、今日は何を達成したのかを具体的に言えるようにしておく必要があるのです。
目的と目標を混同しているわかりやすい例として、「金メダルを獲ります」という表現があげられます。金メダルを獲ることに目的を置くこと自体は問題ないのですが、それだけを念仏のように唱えてやみくもにがんばっても、達成は望めません。金メダルを獲るために必要なこと、克服すべき課題などを目標として整理し、その目標に向かって、常に最大限の力を出して駆け上がらなければならないのです。
また、ときおり耳にする「ノーミスでがんばります」というのも、脳に悪い考え方の例といえます。まず、「ノーミス」と言っている時点で、それは脳にとって「ミスしないようにする」という"否定語"を含み、「ミスするかもしれない」という考えを生みやすくするからです――
(林成之著『脳に悪い7つの習慣』幻冬舎新書、76~78頁)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
林氏は「言われたことをコツコツやる」「嫌だ、疲れたとグチを言う」「常に効率を考えている」「やりたくないのに、我慢して勉強する」などの習慣を、「脳に悪い習慣」と断罪している。ビジネスパーソンが日常的にやりがちなことばかりだ。また、脳が本来求めている生き方とは「違いを認めて、共に生きる」こととも。余裕のなくなった多くの職場では、これとはまるで逆のことが起こっているような気がしてならない。