「どうもウイルスに感染しているようなんですよ。修理となると基盤ごとの交換になり、データが消えてしまうのですが、機種交換しましょうか、どうしましょうか?」
都内でベンチャー企業を営むAさんは、ケータイショップでそう言われて驚きました。
ベトナムの夜の街「ブルートゥース」でデータ交換
そもそもはといえば、ベトナムへ出張に行き帰国してから、電池の保ちが極端に悪化。満充電しても30分あまり経つと、もう残りがない状態だったのです。
「それで、電池パックの交換をしようと、軽い気持ちでショップへ行ったんです。買い換えてからまだそんなに経たないし、ついでに原因を聞こうと店員さんに相談したら、預からせてくれ、と」
ショップからテックセンターへ送って調べた結果が、冒頭の答えだったというわけです。
2004年頃から海外で報告はされているのですが、ケータイのウイルスなんて、日本ではほとんど聞いたことがありません。
「思い当たることといえば、ベトナムなんですね。ベトナムって、日本語を話す人が意外と多くて、まあ、夜の街の女性にもたくさんいるんですよ(笑)。そのなかの一人と、そういえばブルートゥースでデータ交換したな、って。ちょっとしたスケベ心だったんです」
たしかに、中国や東南アジアでは、ブルートゥース経由で感染するケータイのウイルスが報告されています。このタイプのウイルスは、赤外線通信機能を常時起動させ、自分のコピーをバラ撒こうとします。それで、電池を食ってしまうのです。
スケベ心を出して良い結果になることなんてない
結局、Aさんは新しい機種に買い換えました。2年縛りの途中での機種交換ということで、割高になってしまうのは仕方ないと諦めたそうです。
不幸中の幸いといえば、Aさんが定期的にデータのバックアップをとっておくタイプだったということ。
直近に登録したものはともかく、アドレス帳に保存してあった膨大なデータのほとんどは、パソコンから移植すれば済んだのです。
「ベトナムの女性のデータは、残念ながらなくなっちゃいました(笑)。なくなって困る仕事上のメールもバックアップしてあったので、心理的なショックが多少あるぐらいで、まあ、被害はそれほどないですね」
ただ、いきなりケータイを変えたことで、奥さんからは訝しがられたとか。
「ケータイに限らず、スケベ心を出して良い結果になることなんてない、と身にしみましたよ」