70代のAさんが手に入れた「馬券の投票専用機」

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   最近では、高齢者がケータイを使っているのを見かけることも珍しくなくなりました。

   奈良県に住む70代のAさんがケータイを使いだしたのは、2006年のこと。

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JRAの職員に長時間かけて「使い方」を教わる

「競馬の投票がケータイで出来ると知って使い始めたんや」

   若い頃から競馬が好きだったAさん。それまでは、電車に乗って大阪にあるJRAの施設(場外馬券場)へ、ほぼ毎週末行っていました。

「でも、もう年やろ。駅まで行って電車に乗るのも億劫やし、なにより疲れてしょうがない。どうしたもんやと思ってたとき、ケータイで馬券が買えるのを知ってな」

   ネットもケータイも何もわからなかったので、平日にいつもの場外馬券場へ行ってJRAの職員に利用可能な機種を教えてもらってメモし、無事にケータイを手に入れました。

   翌日、今度は設定や銀行口座の開設について、書類の書き方などを質問。

「親切に教えてくれたよ。説明してもらうのだけで、全部で2、3時間はかかったけどね(笑)」

「そんなに連絡を取らなあかん相手もおらんし」

   いまでは使い方も慣れ、自宅近くの喫茶店や雨の日は自宅でテレビを見ながら、競馬を楽しんでいるそうです。

   しかし、このケータイ、たまに自宅などへ電話をする以外は、ほぼ馬券の投票専用機になっているのだとか。文字を打ち込むのが面倒なので、ネットを使ったりはしないというのです。

「若い人はメールとかやってるみたいやけど、ワシらはあんな小さなボタンでパチパチようやらん。そんなに連絡を取らなあかん相手もおらんし。まあ、新聞もテレビもあるし、世の中で何が起こってるかとか知るのは、別に困らんからな」

   それぞれに、ケータイの使い方、楽しみ方があるんですね。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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