気づいたらケータイ落として1時間経っていた

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「いやぁ、本当に死ぬしかないか、と思いましたよ……」

   マスコミで働くAさんが力なく言いました。

   酔って電車で寝込んでしまい、ケータイを落としてしまったのです。

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他人の個人情報の塊 「江戸時代なら切腹もの」

   ハッと気がついて電車を降りたら、見たこともない終点の駅。慌てて逆方向へ行く電車に乗り、またウトウトしてしたものの、なんとか自宅の最寄り駅で下車しました。

   この間だけで約30分。ケータイを落としたようだと認識したのは、自分の部屋に帰りつき、気付けにシャワーでも浴びようかと思った直後でした。

「1時間近くケータイを落としたことに気がつかなかったんです。慌てて回線を止めてもらい、遠隔ロックをしたんですが、その間にもアドレス帳やメールを見られてないかと、気が気じゃなくて生きた心地がしませんでした」

   なぜなら、Aさんのアドレス帳には、誰もが知っている著名人の電話番号やメールアドレスが含まれていたからです。なかには、住所や本名までが記載されている人もいました。

「当たり前ではあるんですけど、ケータイって、もはや自分だけじゃなく他人の個人情報の塊。もし、著名な人のところへイタ電やストーカーみたいなメールがいったらって考えると、もうパニックですよ。江戸時代なら切腹ものだ、って」

   正直に会社の上司や関係者に打ち明けようかと一時は考えたのですが、被害がなかった場合、無駄に不安を煽ることになり、また仕事上で不都合が出てこないとも限りません。

「郵便物の不正転送」のニュースに血の気が引いた

   さんざん迷ったあげく、翌日から「いやぁ、最近イタズラメールとか多くないですか? 自分のところには、なんでだか結構来るんですよね」などと、それとなく探りを入れることにしました。

   もし、相手が「実はウチもなんだよ」とでも返答しようものなら、正直にケータイを落としたと告げ、謝ろうと考えたのです。

「幸い、現在に至るまでイタ電や変なメールが頻繁に来るといった話は出ていないんですけど、ネット上で晒されるとかあり得ると思うと、やはり気が気じゃないです。そんなときに、アイドルグループの郵便物を不正に転送させていたっていうニュースがあって……。マジで血の気が引いて、激しいめまいがしました。あの日は、もう本当に仕事どころじゃなかったです」

   これを聞いていたBさん。

「おまえな、ケータイは精密機器でもあるんだから、ちゃんと丁寧に、大事にしなくちゃダメだよ。俺もさ、昔、ケータイをトイレにボッチャンしてさ。貸してもらった代替機も翌日、またトイレにボッチャンしちゃって。本気でショップの姉ちゃんに呆れられたことがあったよ。まあ、それが今の奥さんなんだけど」

   いずれにせよ、身近になったモノだからこそ、大切に扱いたいですね。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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