厳しい経済状況の中で、企業は「人材の選別」をしはじめている。株式会社セレブレイン代表取締役の高城幸司氏によると、人間集団の「2・6・2の法則」(優秀・普通・冴えない人の割合)の中の、優秀な2割しか「稼げる人」=「組織にとって重要な人材」として認識されないという。ただし、20代のうちは焦らずに、準備期間としてのアプローチを取るべきと助言する。
「数多くの仕事をこなすこと」に徹して社内市場価値を上げる
――「仕事で成果をあげて、早くたくさん稼げるようになりたい」という若手社員の前向きな発言は、聞いていて頼もしい。
しかしながら、現実的な問題として20代で大きく稼げる人になるのは、そう簡単なことではない。社会人としての経験が少ないために、目に見える結果が出しづらく、給与・賞与・ポストのいずれを上げていくのにも、時間がかかるためである。
こんな話をすると、「やる気が失せた」といわれそうだが、この世代は30代で大きく稼ぐ人(利益を創出できる人)になるための土台づくりを行っている助走期間と位置づけるのが、好ましい。
だから稼ごうと焦らずに、じっくり仕事に取り組む。そして会社に投資をしてもらい、将来に向けて育てられているのが、20代であると考えてみることも大事だ。
・・・であれば、20代でできることと、やるべきことが見えてくる。入社時はゼロだった社内市場価値を可能な限り上げる努力をすることである。
そのためには、何よりも数多くの仕事をこなすことに徹することだ。具体的には「仕事の量が多いことが報酬を多くもらっていること」と理解して、取り組んでいくのがよい。ひいてはそれが、会社へ投資分を還元することにも結びついていくためである。
・・・このように日常業務を通して、人とかかわる回数が増え、密度が濃くなっていけば、会社の中に与える影響力がじわじわと広がっていくものである。ここを踏まえて仕事を進めていけるように心がけたい――
(高城幸司著『稼げる人、稼げない人』PHPビジネス新書、171~173頁より)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
「ワークライフバランス」や「コストダウン」の流れの中で、大手製造業などで労働時間の短縮が図られている。しかし、この「ゆとり」施策は若手社員にとって、必ずしも好ましいものではないかもしれない。40代・50代ならまだしも、20代のうちは仕事に集中して力を付けた方が将来のためなのではないか。最近の「何がブラック会社か」の議論にも通じるところがあるだろう。