800人の「人事担当者」を対象としたという大規模な調査結果が公表された。新卒新人に求める要素として、物事に進んで取り組む「主体性」がトップに上がったが、現場からは「いきなり高望みをしすぎではないか」という声も聞かれる。
2010年卒の新人に「ゆとり世代を感じた」51.7%
楽天が運営する「みんなの就職活動日記」は2009年10月23日、楽天リサーチと共同で全国の人事担当者を対象に実施した「2011年度新卒採用に関する調査」の結果を発表した。回答者は、20~69歳の人事担当者男女800人。
これによると、2010年卒の新卒から「ゆとり世代」が就職活動を開始したことを感じたか、と聞いたところ、「とても感じた」(15.9%)と「やや感じた」(35.8%)を合わせると過半数に達した。
どのような点が「ゆとり世代」だと感じたかについては、「欠勤の連絡を親がしてくる」「上司の指導に耐えられず退職するものが目立つ」「思考力、論理的に説明する話力が劣る」「覇気、ハングリーさがない」「義務は果たさなくても主張だけはする」という点が挙げられた。
ただし、「仕事とプライベートをきっちり分けており、プライベートを優先する傾向がある」という指摘については、これが問題であるかどうか賛否があるかもしれない。
新卒新人に求める要素トップ3は
また、「新卒新人に求める要素」を聞いたところ、「主体性」が55.9%で1位。次いで「柔軟性」(41.8%)、「実行力」(41.5%)と続いた。割合が低かったのは「働きかけ力」(6.5%)や「計画力」(7.7%)、「発信力」(9.5%)だった。
選択肢に挙げられたのは、経済産業省が掲げた「社会人基礎力」の要素。社会が求める「学んだ知識を実践に活用するために必要な力」を、2006年2月に経済産業省の研究会がまとめたもので、以下の「3つの能力・12の要素」に分けられている。
◆前に踏み出す力(アクション)
~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~
主体性/働きかけ力/実行力
◆考え抜く力(シンキング)
~疑問を持ち、考え抜く力~
課題発見力/計画力/創造力
◆チームで働く力(チームワーク)
~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~
発信力/傾聴力/柔軟性/情況把握力/規律性/ストレスコントロール力
なお、トップに挙がった「主体性」とは「物事に進んで取り組む力」という意味のようだ。辞書では「自分の意志・判断で行動しようとする態度」とされている。
現場の意見「基本的なコミュ力が重要」
この結果について、大手企業で管理職を務める40代の男性は「人事は高望みをしているのでは。もっと基本的な部分の方が大切」と話す。
「知識も経験もない新卒新人に、いきなり『主体性』を求めたって、うまくいきません。多くの現場では『勝手なことをするな!』と叱られるのがオチですよ。最初は、上司や先輩社員の指示に従って正確に仕事をこなせる力が試されるものです。
この選択肢の中では『傾聴力』(相手の意見を丁寧に聴く力)や『発信力』(自分の意見をわかりやすく伝える力)など、コミュニケーションに関する基本的な力や姿勢が求められるのではないですか」
「ゆとり世代」が受けてきた「個性や主体性が大切」という教育は、将来的には求められるかもしれないが、「最初のうちは別の能力を見られますよ」と人事部がレクチャーしておかないと、入社早々にショックを受けて退職する新人が減らないかもしれない。