新しく入社したり異動したりして、職場の環境に慣れるのは思ったよりも大変だ。ある社員は、異動先の隣の先輩社員がおしゃべりで、いつも話しかけてきて困っている。まだ仕事のペースがつかめていないこともあって、イライラが募っているようだ。
話し出すと止まらない・・・声を聞くだけでイライラが募る
――リース会社に入社して3年目の社員です。人事異動で現在の部署に来てから半年経ちますが、隣の人のせいで仕事ができず、毎日悶々としています。
その人は社歴10年の先輩社員ですが、声が大きすぎる上に私語が多いのです。最初のうちは「面倒見てくれて良い人だな」と思っていたのですが、次第に馴れ馴れしくなり、仕事中にも話しかけられることが多くなりました。
仕事に全く関係の無い話のこともあり、話し出すと止まりません。しかしこちらも、まだ仕事に慣れていないこともあって、おしゃべりに付き合っている暇はありません。「すみません、ちょっといま仕事に専念したいので」というと、一時的に大人しくなるのですが、しばらくするとまた元に戻って、何度か同じ事を繰り返しています。そうやって仕事が遅れて、残業が増えてしまうといった具合です。
最近では「この人は一体何なんだ?」と怒りがわいてきて、声を聞くだけでイライラして、仕事に集中できなくなっています。ストレスもかなりたまっており、私がキレてしまうのは時間の問題です。
でも、そんなことしたら職場の雰囲気も悪くなってしまいますし、逆に私が危険人物扱いをされてしまうかもしれません。他の同僚に相談すると、「あの人は言っても直らないんだよ。前から注意してるんだけどね。だからもうみんなあきらめて放っておいてるんだ」と言われました。周りの人に相談しても解決できそうにないのですが、こんなつまらないことでと思って上司には相談していません。どうすればいいのでしょうか――
社会保険労務士・野崎大輔の視点
上司は「仕事の与え方」を含めてチェックを
適度な私語は、職場の人間関係の「潤滑油」になることもありますが、多すぎれば仕事の妨げになるし、サボタージュにもなります。今回のケースのように一方的に話しかけられることが積み重なると、やる気や生産性の低下につながるでしょう。上司には職場環境を整える役目があるのですから、「こんなつまらないことで」とか「職場での人間関係が悪くなるかも」とか思って黙っているのではなく、自分のストレスを訴えて、しっかり注意してもらうよう頼んでください。
訴えられた上司は、注意が聞き入れられなければ、ペナルティ付きで「私語厳禁」とルール化することも考えられます。また、私語が多いということは、仕事に余裕があるということになります。仕事がよほど速いのでなければ、仕事量が少なすぎるということになるので、仕事の与え方も含めてチェックする必要があります。
臨床心理士・尾崎健一の視点
異動で無意識に「ストレス」が溜まっているようです
まず上司に実情を訴えましょう。しかし人の性格や行動というのは、すぐに変わるものではありません。また「職場にはいろいろな人がいる」ことを受け入れるのも、ある種の健全な考え方です。他の人たちが「あきらめている」のは、もう慣れて「気にならなくなっている」のかもしれません。悪いのは私語をする人とは決まっていますから、もう少し余裕のある受け止め方をしてもいいのでは。彼に仕事上の問題があれば、その点は上司がきちんと注意して、業績評価に反映させることになるでしょう。
異動によって職場環境が変わったり、仕事が思うようにならなかったりすることで、自分で意識しないところでストレスが溜まり、周囲の言動に神経質になっていることもあります。普段からストレスを解消する習慣をつけて、先輩にもときどき「仕事のじゃまをしないでください!」と率直なモノ言いをしながら、仕事や職場に慣れてくれば、気にならなくなることもあるかもしれません。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。