知らない番号から、自分のケータイ宛に頻繁に電話がかかってくる。しかも、無言。
都内に住む三十代のAさんは、今年の春先からしばらく、そんな出来事に悩まされました。
「何か規則性があれば対処の仕方もありそうだが・・・」
「はじめは、ストーカーか嫌がらせかと思いました。でも、身に覚えがない。結婚してもう8年になり、男女のトラブルもありませんし(笑)、仕事上でも思い当たる節がないんですよね」
Aさんを悩ませた理由の一つが、無言電話がかかってくる時間帯です。早朝のこともあれば深夜のこともあり、かと思うと昼日中にかかってくることもありました。
「何か規則性があれば対処の仕方もありそうなんですけど、あまりにバラバラでかえってワケが分からなかった」
家族はもちろん、職場の同僚や友人、知人にもそれとなく相談してみたのですが、これといって理由は見つかりませんでした。
不気味に思うのですが、実害もないため、警察に相談するわけにもいきません。
練習用に「息子のケータイ番号」を登録していた老父
謎が解けたのは、夏休みで家族とともに実家に帰ったとき。
発信元は、Aさんの70代になる父親でした。
「地元の付き合いやなんかで、春から親父がケータイを持ったそうなんですね。親父は昔からメカ音痴で、機械の使い方や管理が下手と言うか、まったくダメでして。おまけに、息子のところへはわざわざケータイで連絡することもなかろうと、私に番号を伝えていなかった、と」
父親はケータイの使い方に慣れようと、練習として息子であるAさんのケータイ番号をショートカットの1番に登録したのだそうです。
そのうえで、いろいろな機能を理解しようと、機能のメニューを開いてとりあえず1を押しているうち、ショートカットに登録してあるAさんのケータイ番号が呼び出され、さらにいじっているうちにコールしていた、ということがわかりました。
「歳のせいで耳が少し遠くなっていて、こっちが『もしもし?』と言ってるのも聞こえていなかったようなんですね。まあ、原因と父親のケータイ番号がわかったので、これからは、かかってきて返答がなかったらすぐに切ればいい、ということになりました」
指と目視による操作でなく、音声認識での操作が一般的になれば、こうしたトラブルも少なくなるんでしょうね。
井上トシユキ