多摩大学教授の樋口裕一氏は、ダメ部下とアホ上司の生態を集め、心構えと具体的な対処方法を著書にまとめている。「親と上司は選べない」という言葉があるが、上司との相性が悪くて毎日が憂鬱な人には、状況打開の参考になるかもしれない。
抗議をする形をとると、いっそう厄介なことに
二人の部下がまったく同じような行動をとっている。ところが、一人は上司にこっぴどく叱られ、もう一方はまったく叱られない。それどころか、褒められることさえある。周囲は、二人の行動にどんな違いがあるのかわからないが、なぜかつねにそうなる。
・・・言うまでもなく、これは上司にあるまじき態度だ。部下を正当に評価し、公平に機会を与えてこそ、部下に信頼される。・・・
えこひいきする上司に対して最も良いのは、冗談めかして、「課長、エリカさんには甘いんじゃないですか」などと言ってみることだ。ただし、このように言えるのは、かなり優しい上司に限られる。
そのようなことが許されない上司の場合には、とりわけ邪険にされている人を、「あいつは良くやっている。エリカさんに負けない」などと言ってやることだ。もし、上司に直接言えない場合には、ほかの人に言う形をとって、上司に聞かせるようにすると良い。
そのようなことを口にするのも難しい場合には、えこひいきする上司の目の前で、同僚を捕まえて、「お前は後輩をえこひいきしている」と怒るといい。そして、えこひいきが良くないことをわからせる。
それでも自分のことと思わない上司に対しては、最終的には、邪険にされている当人が直接に上司と話をするしかない。とはいえ、抗議をする形をとると、いっそう厄介なことになる。
えこひいきする人間は、所属意識が強い人間であることが多い。自分の権力になびこうとしない人間を邪険にし、素直に従属する人間を可愛がろうとする。それゆえ、たまに従順なところを見せ、上司を信頼しているところを示すと、機嫌が直ることが多い。
(樋口裕一著『ダメ部下・アホ上司の使い方』角川oneテーマ21、156~158頁より)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
著者によれば、昔は密接な人間関係を営んでいたので、「バカもしばらくたつうちにだんだんと態度を改めていった」。しかし今では、面と向かって注意する人がいなくなったので、自分のバカな態度に気づかない人が増殖したという。昔に戻ることは難しいので、これからは上司も部下も、相手の個性(?)を尊重しつつ、上手に対処して使っていく能力が重要になるということだろうか。