都内大手企業に勤めるBさん。彼女の勤める会社でも「コストダウン」が本格化しているという。「全社一律20%」という高い目標だが、「これまで意識が足りなさすぎだったので、何とかなるんじゃないかなと思っています」と楽観的だ。
>>職場のコスト削減ナウ(上):昼休みはエアコン「オフ」で蒸し風呂
「パワーポイントのカラー資料」廃止で効果
ただ、悩みの種は、いま打ち出されている削減策が業務の混乱を招いていること。最初に通達されたのは「電話機の台数の削減」。以前は4人に1台だったが、8人で1台となった。
「島(グループ)の向こうから『○○さーん!』と呼ばれて、いちいち席を離れて受話器を取りにいかなければならなくなりました。電話機が減っても通話が減るわけではないので、"話し中"が多くなっていると思うんですけどね。大事なお客さんとは、もっぱら自前のケータイで連絡している人もいます」
プリンタも6人で1台が、12人で1台になった。リース料は減ったが、トナーの交換回数は非常に多くなった。出力された紙が山積みになり、他部署の資料と取り違えるミスが増えてしまったという。
カラープリンタは原則使用禁止となり、社外に提出するものでも、よほど重要なものだけに限られた。また、「モノクロ・両面印刷」がデフォルト(初期設定)となった。
「パワーポイントの資料を大量にカラー印刷する人がいなくなり、コストは大幅に下がりました。『社内会議の資料はA4・1枚が基本』となった部署もあります。資料の見映えはしなくなりましたが、説明者の話をよく聞くようになったそうです」
会議室の使用料徴収で「フロアはガラガラ」
これまで月次の管理資料は、関係部署には出力帳票のコピー(紙)を配付していた。これをPDFデータの配付に代えるため、担当者は「元データ」と「出力帳票の原本」に加え、「原本をスキャンした閲覧用PDF」を作成することになった。
「担当者としては、元データをメールで送ってしまえば楽なのですが、セキュリティの確保のほかに、原本への部長の印鑑も必要なので・・・。紙で回覧していたときは、他部署から"てにをは"の表記の誤りなどの指摘がきましたが、最近はなくなりました。あまり見られなくなっているのかもしれません(笑い)」
プリンタのコストは下がったが、スキャンの作業とPDFデータの管理が新たに増えたので、トータルでの効果が出ているかどうかは怪しい、とBさんは言う。また、エレベータの稼働が2台から1台になり、昼休みにはエレベータの前には長い行列が出来ているという。
「エレベーターが混雑して、午後の始業に間に合わないんです。私は並ぶのが面倒なので、コンビニで昼食用のパンを買ってから出勤しています。生活防衛を兼ねて、家から弁当やおにぎりを持ってくる人も増えましたね」
それから、新年度から会議室の利用が「有料」になったとのこと。
「利用料は部屋の大きさによって異なりますが、1時間あたり1000円前後です。お客様にはお茶は出さず、ペットボトルのお茶か、紙コップのコーヒーを選んでもらうことにしました」
結果的に会議室フロアはガラガラになり、コストダウンになった模様だ。しかし、会議なしに仕事は円滑に進んでいるのだろうか。