拾ったケータイに付いてたはずの「アレ」とは?

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   霊感商法のようにして「開運ブレスレット」を誇大広告で販売していた業者に、一部業務停止命令が出されました。

   このニュースを聞いて、都内に住む会社員の30代のAさんは、ちょっと嫌な思い出がよみがえったそうです。

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親切心で交番に届けたケータイが面倒なことに

「2、3年前でしたか、営業で外回りをしていて、偶然、ケータイの落とし物を拾ったんです」

   ある地下鉄の出口あたり、植え込みの横にある喫煙スペースでタバコを吸おうとして、たまたま見つけたのでした。

「拾っても面倒くさいかな、とも思ったんです。いま思えば、天からの啓示だったのかもしれないんですけど。でも、ケータイを落としたとなると、すごい不安になるし、焦ってるだろうなと思い直して、届けることにしました」

   幸い、すぐ近くに交番があったので、さっそく届け出ました。

   「届けて、はい終わり」と軽く考えていたAさんでしたが、警官は「念のために住所、氏名、連絡先を書いて」と言います。

「いや、御礼とかいいですからって言うと、違う、と。ケータイ絡みの犯罪が多いから、イザという時に拾った状況とか聞くかもしれないから、っていうことでした」

   これが、まず面倒くさいことの第一弾。

   Aさんはしぶしぶ個人情報を所定の書類に書き込み、交番を後にしました。

   面倒くさいことの第二弾は、さっそくやってきました。

「見慣れない番号から電話がかかってきて、さっきの交番だって言う。何かと思ったら、落とし主が現れたが、無くなっているものがあるから事情を聞きたい、と」

警官が「鞄とポケットの中身を見せてくれ」

   面倒くさいなと思いながら、後ろめたいことのないAさんは、後ろめたいことがないからこそと考えて、事情聴取を受けに交番へ引き返しました。

「交番に着くと、落とし主がいて、ケータイに付けていたストラップ型のチャーム(アクセサリー)がないんだけど、知らないかって」

   落ちていたものを拾っただけのAさんは知る由もありません。

   そう答えると、落とし主は、「あれは特別な幸運のお守りで、無いじゃ済まない」と、泣かんばかりの勢いです。

「すると、警官が、まあまあとか言いながら、鞄とポケットの中身を見せてくれ、って言うんですね。疑われているようで非常に不愉快だから、なんでだってこっちも食って掛かると、不愉快だろうけど、無かったならそれで疑惑が晴れてスッキリするじゃない、って。いや、こっちからすれば、別に疑われたくもないし、スッキリもしたくねーよ、ですよ(笑)」

   このままではラチがあかないので、後ろめたいことのないAさんは、何も出てこなかったら落とし主が謝るという条件で、鞄とポケットの中身をすべてデスクのうえに出しました。

「そんなものが出てくるはずもないので、最後には警官に諭されて落とし主は謝ってましたよ」

   それにしても、とAさんは思うそうです。

「そんなワケのわからない石とかじゃなくて、自分の力とか、明日の可能性とか、なんで信じられないだろう、と。自分は自分を信じて、明日も明後日もがんばるぞって、かえってそう思えるようになりました。その意味では、面倒くさかったけど、意外と自分の人生にとっては重要な出来事だったのかもしれないですね(笑)」

   嫌味のないAさんのポジティブ・シンキング、ちょっと良い感じですね。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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