未曾有の不況で、各社は売上不振にあえいでいる。ならば、ということで注目されているのが「コストダウン」だ。全社的な一般管理費の削減は、業務の効率を下げてしまう場合もあるが、利益の捻出には即効性がある。いま行われている取り組みについて、現場のビジネスパーソンに聞いた。
>>職場のコスト削減ナウ(下):電話は「8人で1台」会議室は「有料」
就業時間後のエアコン使用には「超過料金」が必要
Aさんが勤めているのは、都心に自社ビルを構える大手企業。1階のエントランスは明るいが、エレベーターを降りると、各フロアの廊下は急に薄暗くなるという。
「電力の節約のために、電球を1個おきに外しているんです。昼間からムーディな雰囲気がただよっていますよ」
仕事場に入ると、パソコンが発する熱と人いきれで、ムッとした空気が漂う。エアコンの設定温度は「クールビズ」で28度。昼休みに入ると、これが完全にオフになるという。
「仕事の区切りが付かないときもあるんですが、高層ビルなので窓も開かず、蒸し風呂状態になります。頭がボーッとしてきますね」
「そこまでやるか」と社員は不満タラタラだが、「女性社員の薄着が増えた」と密かに歓迎している男性社員もいるとか。
就業時間が終わると、エアコンは再びオフになる。オンにするためには、上司に「時間外勤務申請」の承認を得た上で、1時間あたり数百円の「超過料金」を総務部に支払わなければならない。支払いは各部署の予算から行われるため、残業の承認審査は厳しくなっている。結果的にコストダウンにつながっている、というわけだ。
「ここ数ヶ月で残業が承認されたのは、数日しかありません。エアコンなしでは仕事場にいられないので、最低限のことを片付けたら退室します。残業は大幅に減りましたね」
終業後は涼を求めて「社員食堂」で生ビールを注文
定時で上がった社員たちは、どこに行くのだろうか。
「社員食堂に行くことが増えました。ラストオーダーは21時。アルコールも出るし、眺めもいいので、夜の社員食堂は社員で盛況ですよ(笑い)」
また、「夜だけ主夫」になる人も。
「帰宅が早くなったので、共働きの家庭では、帰りがけにスーパーで買い物をして夕飯の準備をするようになった男性もいます。ちょうど閉店前の"半額セール"に間に合う時間ですので、家計も助かるそうです」
帰りの買い物に備え、仕事の合間に「チラシ比較サイト」をチェックしている人もいるという。残業代の収入は減ったかもしれないが、「コストダウン」とともに、なかなか立派な「ワーク・ライフ・バランス」が進んでいるといえるのではないか。エアコンオフは嫌だが、少しうらやましい気もする。