「ケータイが普及したおかげで、選挙運動も変わったよ…」
ある選挙スタッフは、そう言いました。関西地方の大都市圏の一角から出馬した候補者のボランティアで、選挙のボランティア・スタッフとしては、すでに25年近い経験があります。
何が変わったのでしょうか?
選挙違反の「決定的瞬間!」を撮られないよう注意
「ケータイにはカメラが付いているでしょう? 候補者やスタッフが活動中に法律違反をやってしまったり、法律に抵触するような振る舞いをしてしまうと、たちどころにケータイのカメラで現場を写して、対立候補や地元の選管に報告されてしまうんですよ」
選挙運動中に握手などをしていて集まってくる有権者は、何も支持者や支援者だけとは限りません。対立候補陣営の関係者や見張り番(スパイ)もいます。
なかには、街頭演説などの法定時間である午後8時を過ぎても、「追っかけ」のように付いてくる人もいるのだとか。
「敵か味方かわからない、そういう人への対応を含めて、ものすごく気をつかうようになりましたね。動画で『違法行為の決定的瞬間!』などとネット上で公開されたら、やはりイメージダウンになるし。
場合によっては、痛くもない腹を警察に探られることになりますから。活動中の適法、違法行為については、候補者はもちろん、スタッフにも徹底して教え込んでますよ」
怪しい人は「もっとお近くへ」と誘導して正体を探る
候補者の周囲でしょちゅうウロウロしている、敵か味方かわからない「追っかけ」のような人へは、街頭であれば「どうぞ、もっとお近くへ」と誘導したり、「候補とお話しになりますか」などと下手に出て声をかける。
公民館などでの演説であれば、「お席がありますから、中へお入りになりませんか」と水を向けるなどして、心証を害しないよう気を配りつつ、正体を探るそうです。
選挙違反を写メで撮って報告しようと、党ぐるみで煽っているところも実はある、とも聞きました。
たしかに、気疲れしてしまうのも無理はありません。
しかし、よくよく考えてみれば、日頃悪し様に言われ、ここでも悪者扱いのケータイですが、結局は違法行為への抑止力となっているわけです。
選挙は本来、公明正大でなければならないもの。ケータイが普及した所為で違法活動が減るなら、有権者にとっては、それはそれで結構なことではあります。
井上トシユキ