ケータイを掲げて有名人を包囲する「不気味な集団」

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています
「ケータイ、すごい不気味ですよ」

   ある有名人が言います。不気味とは、またどういうことでしょう?

>>ケータイとほほ観察記・記事一覧

画面を見ながら無言で近づき電子音だけが響く

「普段は滅多にないんですけど、番組などの都合で街なかで顔を出すことがあります。そうすると、四方八方からケータイが迫ってくるんですよ」

   ケータイについているカメラは、たいてい機体の背面にあります。折りたたみ式にせよ、スライド式にせよ、被写体にケータイの背面を向けつつ、目線は画面を見ながら撮影することになります。

   昔のカメラだったら、ファインダーを覗き込みながら写すから、撮る人の顔もカメラも被写体の方を向いていました。したがって、撮られている方も、ああ、撮られているな、と気づけます。

   でも、ケータイの場合、画面を見つつ背面のレンズで撮るもんだから、うつむいたり、斜め上に顔と視線を向けることになります。

   被写体にすれば、ケータイは自分に向けられているのに、ケータイを持っている人はあらぬ方向へ注目しているように見えてしまう。

   自分が撮られているのかどうか、ちょっとわからなくなってしまうのです。

「こちらを向いていない人たちが大勢いて、ケータイだけがこちらに掲げられているような感じになるんですよね。それが、ジワジワと無言でこちらを包囲してきて、ランダムに『ガシャッ』って電子音があちこちでするわけですよ。これは、怖いですよ(笑)」

手を挙げて振るのは「こっちを向け」という意味か?

   同じことで、デジカメも不気味なのだそうです。

   たしかに、デジカメもカメラのレンズは被写体に向けられますが、顔と視線は本体背面のモニターを向いています。

「それでいて、『こっちを向け』という意味なんでしょうが、うつむいたままで手を挙げて振る人がいる。普通、話すとかコミュニケーションを取る時って、顔や視線は相手の方へ向けますよね。
顔と視線は下の方を向いたまま、手のしぐさだけで合図されると、なんだか言葉や習慣が通じない宇宙人に囲まれてるような気になってくるんですよ(笑)」

   笑ってソフトに話してはいますが、本心では恐らく気分は悪いでしょう。

   便利なツールを使いこなすのは別に悪いことではありません。でも、ツールを使う時には、相手を慮る気持ちやマナーには、やはり気をつけたいものです。

井上トシユキ

>>ケータイとほほ観察記・記事一覧

井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
姉妹サイト