少し前に、気鋭のベンチャー経営者から、新商品・サービスのプレゼンを聞く機会があった。6分ずつ、15社ものプレゼンを立て続けに聞き終わった後、「心を打つプレゼン術」のツボが整理できた気がしたので、「7つの鉄則」にまとめて紹介しようと思う。
1.「サビ」「クライマックス」から入れ
たとえば映画であれば、オープニングにまず、盛り上がる「ツカミ」のシーンをもってくる。そこでいったん観客を引き込んでから、「話は10年さかのぼって」と、ペースがゆっくりのシーンに戻っていく。いいプレゼンも一緒。
一番おもしろいところ。それはデモだったり、商品のプロトタイプだったり、リアルなケーススタディであったり。なんでもいいのだが、まずは一番面白いところを見せてから、全体像を語るべきだろう。
2.「裏の裏(のウラ)」をかけ
プレゼンを聞いているとき、せっかちな我々は(あー、あの話ね。あれって、○○がダメなんだよねー)といった感じで、常に一歩先を読んで、ネガティブな情報を考えたりする。だとすれば、プレゼンで大切なのは、「裏の裏をかく」ことではないか。
(あー、そのサービス。似たようなの他社もやってるけど、流行ってないよね)
「それでは、次にA社とこのサービスの決定的な違いをご説明します<資料が用意されている>」
(でもさぁ、ユーザーはこういうの面倒だから、使わないよね)
「次に、ユーザーに実際に触ってもらった体験談とアンケート結果をご説明します<データが用意されている>」
(ふーん、ちょっとは面白いかもしれないけど、Web2.0ってカネにならなくね?)
「さらに、このサービスの3つの収益源を説明します。すでに何社かに非公式に打診したところ、××なら払ってもいいと言っています<資料が用意されている>」
などなど。こう話したら、どういうツッコミが入るだろうか。それに対しては、どうこたえるのが説得的だろうか。その答えに対して、さらにどんなツッコミが入るだろうか。それに対しては、どんなデータを見せるか。
いわば、シャドウ・ボクシングのような形で、どれだけ深く裏の裏のウラをかけるところまで準備しているかによって、説得力のあるプレゼンが作られるのではないか。
3.エレベーターピッチ:「最初の1分で、言いたいことを全部言い切れ」
いつ途中で打ち切られてもいいように、最初の1分でもっとも大切なポイントと、伝えたいことを話せるようにする。詳しい説明は、興味を持ってもらってからでいい。ポイントは、3つに絞った分かりやすいストーリーで。ネット生保でいえば、
(1) 年間45兆円の巨大市場
(2) そこにある大きな非効率(あなたも生保セールス、受けたことあるでしょう?)
(3) その巨大な市場がいままさに変わろうとしており、新規参入のチャンス大
というのが大きなストーリー。これなら30秒でも説明できる。大切なのは臨機応変にプレゼンの「1分バージョン」「10分バージョン」「1時間バージョン」を行き来できるくらい、内容とポイントを練り上げていくことだ。
4.「勢い」「情熱」「パッション」
月並みだが、もっとも大事かもしれない。やっぱり、明るく、大きな声で、元気いっぱいで、勢いと強い思い入れをもって、パッションたっぷりで語っている人は、ストーリーの説得力が5割増し。勢い、大切です。
5.「生々しさ」「リアルさ」を追求せよ
ユーザー事例を写真などで交えたり、社内でもいいからヒアリングをしたりユーザー体験をしてもらったりすると、説得力が増すはず。リアルなユーザー像や現場の声を取り入れ紹介する。どうやって、プレゼンを聞いている人が自分にrelated(関係付け)できるか。その名シーンづくりに知恵を絞るべし。
6.インパクトある「ファクツ」や「データ」を示せ
「よさそう」とか「面白そう」というのは主観であるが、データはどんな主観的なものより強い。我々であれば、
「年間45兆円の市場」「GDPの約1割」「年間53万円の保険料」
などなど、大きな数字を投げたのがインパクトがあったようだ。小さな独自調査でもいい。「n=60の調査ですが、82%の人が、○○は使いたいと言っています」みたいなものでも、データがあるか否かで、説得力はまったく違う。
7.とことん「リハーサル」せよ
制限時間が6分と決まっているのに、話が終わらない人が何名かいた。6分なら3分で言いたいことを全部言い切るつもりで、何度もリハーサルした方がいい。どうせ50%くらいは時間オーバーしちゃうんだから。
あと、プレゼンで緊張してしまう人がいるが、これも練習の数だと思う。「なぜ緊張するか」というと、結局「自信がないから」に尽きる。「この話をしたら絶対にウケル」とわかっていたら、絶対緊張しない。
3回の練習で緊張するなら、10回、20回やる。親しい人に聴衆となってもらい、改善点を出してもらう。さすがに20回もやったら、全然緊張しなくなるのだから。
岩瀬 大輔