数年前に登場したミクシィ(mixi)を始めとする「ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)」はいまや人々の生活に当たり前の存在として定着したが、セレゴ・ジャパンが運営する学習サイト「smart.fm」もSNSの要素を積極的に取り入れている。「SNSではなくSLS(ソーシャルラーニングサービス)だ」というわけだが、その中心にいるのがサイトディレクターのラッセル(ラス)・メンチである。
大学で「東洋学」を専攻 中国、台湾、そして日本へ
ラスはNASAのジョンソン宇宙センターがあることで知られるヒューストンの出身。東部アイビーリーグのプリンストン大学で東洋学を学んだあと、中国や台湾で暮らし、最後にアジアの東の端にある島国にやってきた。
半年間は倉敷の中高一貫校で英語を教えていた。その後、上京し、MBA留学のための予備校で講師になった。その学校を経営していたのが、セレゴ・ジャパンの創業者でもあるアンドリュー・スミス・ルイスとエリック・ヤングだった。
予備校で教材開発に関わっていたラスはセレゴに入社し、オリジナルの学習コンテンツを制作に携わるようになる。
「既存のコンテンツは生の英語、使える英語という観点からは改良の余地が大きかったので、新たなコンテンツを作るのはやりがいがあったよ」
ウェブの語学学習サイトである「smart.fm(当時の名前はiKnow!)」が始まってか らは、サイトディレクターとして、サイト全般の監督、smart.fmのコンテンツ開発、ユーザーコミュニティの管理したりしている。
みんなで学べば、語学学習も続けられる
smart.fmは脳科学にもとづく独自の記憶管理システムがウリだが、一人だけの勉強は長続きしないことが多い。そこで、学んでいる者同士がお互いに励まし合ったり、疑問点を教え合ったりできるようにSNSの機能を導入している。
ミクシィのようにマイページで学習日記を書いたり、コメントをつけたりできるだけでなく、自分が作った単語や例文のリストを他のユーザーと共有することもできる。逆に、他人が作ったコンテンツを自分流にアレンジして、より使いやすい教材を作り出すことも簡単だ。
「限られた人数の生徒が教室に集まって学習する昔ながらのスタイルと違って、ウェブではニューヨークやロンドンにいる人も、東京にいる人も一緒に学ぶことができる。それぞれ関心のある分野ごとに、世界中から人が集まってお互いに情報を共有したり、教え合ったりできる。ウェブの可能性を引き出すには、そういうソーシャルラーニング的な機能を強化していく必要があるんだ」
ラスはこのように語るが、オンライン学習サイトが注力すべきポイントはもう一つあるという。それは、従来は一冊の教科書の中に順番にまとめられていた学習内容を何千もの情報ユニットに細分化して、個々の学習者のニーズに応じて自由自在に組み合わせて提供することだ。
「すべての情報を細分化して、いつでも必要な情報に瞬時にアクセスできるようにすることが重要だ。それを実現したのがグーグルだが、学習の分野でも似たようなウェブサービスが求められている」
グーグルといえばウェブ界の巨人だが、
「巨大企業がネットを独占的に支配する時代は終わりつつある。かつてのグーグルがそうであったように、動きの速い小さな会社が革新的なサービスを生み出して、大きなインパクトを与えていくだろう」
とラスは考えている。セレゴも約20人の小さな会社だ。smart.fmという今までにないタイプの学習サイトで、世界にどれだけインパクトを与えていけるだろうか。