TBSの日曜21時から放送中のドラマ『官僚たちの夏』がなかなか面白い。毎週民放のドラマを見るなんて、たぶん15年ぶりくらいではないか。キャストも豪華だが、昭和風のセットだけでも見る価値がある。それくらい金も手間も掛かった良質のドラマだ。
アメリカを目指す日本の姿がいまの中国と重なる
内容としては、高度成長期を通じて日本を成長させようとする通産官僚たちの奮闘記で、モデルとなった人たちもちゃんと存在する。もちろん現実とは大分違うが、ドラマなのでそれはそれだ。
ところで、ドラマを見ていて、いくつか考えさせられた点がある。
まず、経済大国アメリカと、それに追いつこうと頑張る日本の姿が、そのまま現在の日本(および先進各国)と中国の関係にかぶってくることだ。自由貿易のほうが各国共に望ましいという点でコンセンサスは成立しているが、新興国としてはできるだけ規制を残して自国産業を育成したい。といって、先進国も保護貿易を受け入れるほど優しくもない。
アメリカによる輸出自主規制の要求に苦しんだ日本の繊維業界も、21世紀には中国産タオルへのセーフガード発動を求めていた。このレースに終わりはないのだろう。
もちろん、通産官僚たちも「白か黒か」なんて青いことは言わない。「繊維産業を守れ!アメリカに追従するな!」と自由貿易の尊さを叫んでいた主人公たちは、その一週間前には「自由貿易反対!国産テレビを守れ!」と大暴れしていた。
要するに、みんな自国第一のパワーゲームなのだろう。そういう意味では、日本のGATT加入を後押しし、80年代までは国内規制を大目に見てくれたアメリカは(冷戦という理由があったとはいえ)気前の良い国である。
終わりなきレースで勝利するのは「走り続ける国」だ
そして、もう一つ気づいた点は、そのアメリカの地力だ。80年代、デトロイトでは日本車を燃やして騒いでいたアメリカ人もいたものの、現在はマイクロソフトやグーグルといった新たな帝国を築いて世界に君臨している。この分野では当面、アメリカの競合相手は出てきそうにない。
確かに金融ではひどく躓いたが、環境や次世代エネルギーをキーワードに、とっくに次の目的地を目指して走り出している。レースに終わりがないのなら、結局最後に勝つのは、途中でこけようが迷子になろうが、走り続けている国なのかもしれない。
そう考えると、残念ながら現在の日本は同じ場所に立ち止まっているように思えてならない。この先、日本は家電や自動車といった柱以外にも、成長の柱を立てることが出来るのだろうか。
前回書いた組織における"新陳代謝"が、国レベルで滞っている点にこそ、日本の閉塞感の根本がある気がしてならない。
城 繁幸