不況で客足がすっかり落ちているのが、フレンチ、イタリアンなどの高級レストランなのだそうです。
そう聞いた会社員のA子さんは、「ならば、逆にチャンス」と、これまでならなかなか予約もできなかった高級レストラン巡りをしています。
月に1度のリフレッシュをバカ騒ぎに邪魔される
「月に1度か2度の贅沢ですし、お洒落して出かけて、美味しいものを食べて、ストレス発散ですよ」
先日も、グルメサイトや雑誌で評判の高いお店に、気の合う友人と出かけていきました。ところが、これがとんだ興ざめに……。
「お客は私たちともうひと組、若いサラリーマンの集団の計2組しかいなかったんです。こいつらが、なんと食事の間なのにケータイしまくり!」
サラリーマンの集団は、20代から30代半ばあたりの4人。ベッカム風に上げて固めた短髪やホスト風の長髪など、みんなイマドキな感じでした。
「こいつら、アペリティフから『カンパーイ!』とか場違いだなとは思っていたんです。わざとらしく『これって、深海魚の肉っスか?』『ちげーよ、バカ!』『サーッセン!サーッセーン!』とか騒いでるし。ホントに『バカじゃねーの』って冷めてたんですよね」
そのうち、一人のケータイの着メロが客の少ない店内に響き渡りました。
「そういう高級店って、まずケータイをテーブルまで持ってこないものなんですよ、フツー。しかも、着メロ?マジで?って感じで」
レストランの店員もなぜか「なかったことに」
着信を受けたサラリーマン氏は、これまた大きな声で「いやー、いま○○○へ来てんスよ、そうそう、あの有名な(笑)」「いやー、接待っス、会社の」などと受け答えを始めました。
「これまたビックリ。接待ならなおさらかけ直すとか、お店の外に出て話すとかするでしょう? しかも、客より店内に多い給仕さんたちも、なかったことみたいに知らん顔してるし。もう、最悪」
A子さんは、それとなく友人らに目配せしました。友人らも嫌な顔をしています。
レストランサイドからすれば、どうせ客も2組しかいないんだし、悪い評判を「接待組」にたてられるよりは、なかったことにしておいて、また来てもらおうと考えたのかもしれません。
すると、そのなかのB子さんが口を開きました。
「実はさあ、あれと同じことをこないだカレシにやられてさあ。当たり前だけど、チョー恥ずかしかったんだけど、あらためて第三者目線で見ると、これはありえない。マナーとかの前に、バカ丸出しじゃん。迷ってたけど、やっぱ別れるわ」
他人や周囲に迷惑、不快な思いをさせる可能性があれば、それを避けるというのが、マナーの基本。高級店や有名店でなくとも、それは同じことですね。
井上トシユキ