やっぱり無かった「共産党ブーム」

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   都議選で自民党が歴史的な大敗を喫し、野党民主党が第一党に名乗り出た。都議選は総選挙の前哨戦だから、今後もこの流れは変わらないだろう。

   ところで、議席の減少率と言う意味では、自民党よりも歴史的大敗を遂げた野党が存在する。日本共産党である。改選前13議席がいまや8議席。“蟹工船ブーム”だのなんだの言われていたものの、まったく国民に相手にされていないというのが実情だろう。彼らが見捨てられた理由とは何だろう。

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現代日本には「階級」なんて存在しない

   さすがに生産手段の国有化や私有財産の否定などは言わなくなったが、それでも彼らはあるものを堅く信じ続けている。それは「階級闘争」だ。資本階級とプロレタリアート(無産労働者)が対立し、やがて資本主義が崩壊して共産主義に進化するというロジックは、彼らの思想の肝の部分だ。共産党である以上、ここは何があっても捨てられないらしい。

   だが、少なくとも現代日本において、階級なんてものが存在しないことは明らかだ。大企業のトップは資本家ではなく生え抜きのサラリーマンだし、中小企業のオーナー社長は自宅担保で運転資金を借りるものなので少なくとも“資本家”とはいえない(後継者不足で年7万社が廃業するほど割に合わない)。プロレタリアートはいることはいるが、普通のサラリーマンには何らかの資産がある。少なくとも大手の組合員中心の連合は、明らかにプロレタリアートではない。

   今日の「正社員と非正規雇用」に見られるような格差問題の本質は、身分制ともいうべき正社員保護規制によって、単純に労働者間の分配が上手く行われていない結果に過ぎない。だから仮に階級があるとしても、それは連合とその他労働者の間であるべきで、結局は労働市場の流動化しか解決策はないことになる。

   というように、問題も答えも見えているにもかかわらず、「資本家が悪い!大企業を規制せよ!」と見えない敵を相手に闘争をしかけ続ければ、そりゃかたぎには相手にされなくなるだろう。

結果を考慮しない「規制強化」は若年層にとって害悪

   フォローしておくが、僕は左派全体を否定するつもりは無い。スウェーデンのように、マルクス主義と決別した左派政権が、市場原理を積極的に活用することで流動性のある社会を作ることに成功している事例もある。日本の左派にも階級闘争を捨てているグループは少なくなく、市民派や新左翼グループの中から、今後そういった新たなうねりが生まれてくるはずだ。

   だが、日本共産党はもう死んでいる。「共産党にも存在価値はある」という人もたまにいるが、僕はそうは思わない。結果を一切考慮しない安易な規制強化ばかりを主張し、派遣切りを拡大させるなど、若年層にとってはむしろ害悪でしかない。心置きなく死んでくれといいたい。

   とにかく教義を信じることに専念し、内部評価を上げた人間だけが昇進する。彼らの理想は浮世にはないので、内部評価と世間評価は一致しない。そういう意味では、共産党員はどこか宗教的である。

「きみ、ちゃんとお札は買っていますか?」
「いえ、買っておりません…」
「信仰心が足りませんね。そんなことでは高いステージに参加できませんよ」

   お札=赤旗、信仰心=革命的気概、高いステージ=革命に読み替えると、特に違和感もない。

   もうこうなったらいっそのこと、宗教法人化すればいいんじゃないかな。「マルクス教」とかいって、とりあえず経典は『資本論』で。死後は「貧富の差がなく、無気力労働者も腐敗官僚もいない計画経済体制で幸せに暮らせますよ」とアピールすれば、今より信者、いや党員も増えることだろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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